移住がくれた縁が、国産化推進の原動力に

 今、新たに進めているのが、日本の竹で国内製造する純国産バンブーロールの開発です。竹のパルプ化と抄紙(しょうし・紙をすくこと)という国内に前例のない工程に一緒にチャレンジをしてくれる意欲的な工場を見つけ出し、21年には、長野県内で伐採された竹を原料に竹パルプの試作を完了。現在は実際に抄紙工程に移ることができるか、検証を重ねているところです。

 国産化に必須の竹の確保は、「東京在住のままだったら、その糸口すらつかめなかったかもしれません」。富士見町の隣にある原村を拠点に、長年竹林整備に取り組んできた工務店「アトリエデフ」を知った増村さんは、同社の竹林整備に繰り返し参加。それがきっかけで、同社が伐採した竹を試作品づくりに使えることになったほか、竹林整備に取り組む近隣地域も紹介してもらうなど、原料確保への扉が大きく開いたといいます。竹害は全国各地で深刻化していますが、伐採はボランティア頼みなのが現状。アトリエデフとの連携を足掛かりに、自治体などに働きかけ、竹の伐採を「雇用も利益も生む持続可能なビジネス」として確立したいといいます。

 「中国産バンブーロールのD2Cサービスを構築するまでは、都市でも可能だった『空中戦』。対して、国内産用の原料集めは、軸足が地方にあるからこそ有利に進む『地上戦』。移住によって得られた縁を大切に生かし、年内をめどに国産化を実現したいです」