無意識に使われる日用品が変われば、社会は変わる
かねてゴミ問題に関心を抱き、移住後は自宅内に17種類の分別スペースを設けて分別と再利用に努め、その意義を情報発信してきた増村さん。
「でも情報を伝えるだけでは『いいことですね』で終わってしまいがち。ゴミ問題を自分事と捉えてもらうには、『暮らし方や消費の仕方を考えるきっかけになる商品』があればいいと、考えました。トイレットペーパーは、シングルかダブルかという選択肢はあっても、実際に購入するのはスーパーで一番お得なものになりがちで、リサイクルもリユースもできず水に流される“最もどうでもいい日用品”。それを変えることが、社会をサステナブルに変える一歩になると、本気で思いました」
社会問題化している竹を活用
原料を竹にしたのは生育が早く、かつ若木は特に二酸化炭素の吸収量が多いため。一方、たけのこ栽培を目的に植えられた結果、山林を侵食し、地滑りを引き起こすなど、近年、社会問題化している竹。「木材パルプの代替品として活用すれば、竹害だけでなく、森林伐採や地球温暖化などの解決に役立つと考えました」
日本で販売されているトイレットペーパーのうち、6割は再生紙で、4割は木材パルプ。日本の製紙会社では、竹の原料を扱ってくれる会社は企画の時点では見つかりませんでした。幸い竹のトイレットペーパーを作る工場が中国にあると分かり、吸水性の高い3層構造にし、日本仕様にして商品化することに。21年1月に販売を始めました。