移住先の候補をキャンピングカーで巡る

 仁さんもこの頃を振り返り、こう話す。「転職して5年目、そろそろ会社を辞めたいんだけどと切り出されたとき、ちょうど僕の会社が早期退社プログラムを始めたタイミングだった。『この機を逃すとまたタイミングが合わない』と、二人で移住計画を実行することにしたんだよね。僕のほうは2016年3月で退職。辞めたときは移住先すら決めていなかったけれど」

 「移住先どころか、どうやって移住するのか方法も知らなくて。とりあえず田舎暮らしの雑誌を買ったら、その表紙がたまたま千綿駅でした。同時期に買った雑誌に、長崎県では県内への移住を検討する人に、キャンピングカーを1日3000円で貸し出す移住サポート(※1)を行っているという情報が載っていて、これは面白い取り組みだなと思いました」と晶子さん。

 50歳少し手前で移住するというのは、二人で話し合って決めていた。もし考えが変わって東京に帰りたくなっても、まだ仕事が見つかる年齢だろうし、移住先にも柔軟に溶け込めるだろうという考えからだ。問題は、どこに移住するか。キャンピングカーで候補地を巡った二人は5カ月後、「最初は町名の読み方すら知らない町」、長崎県東彼杵郡(ひがしそのぎぐん)東彼杵町に引っ越すことになった。

※1/ながさき移住サポートセンターで現在も実施中。詳細は「ながさき移住ナビ」で確認を。

※移住先での暮らしを語った(下)はこちら。
過疎地に移住 50代の今だから、不便を工夫で越えられる

「さいとう宿場」

取材・文/飯田敏子 写真/松隈直樹