仕事も遊びも、楽しく頑張るのは好きだけど、でもちょっと最近息切れ気味…。そんな胸突き八丁のARIAなお姉さまがた、こちらでちょっと一服していきませんか? 皆さんをお迎えするのは、「覇気がない」を自認する北海道在住のエッセイスト、北大路公子さん。50代実家暮らし、お酒をこよなく愛するキミコさんが切り取る日常は、役に立つ話はほぼゼロ! しかしながら、そのゆるさと無駄にさえわたるユーモア、並の高級エステより癒やし効果抜群かもしれません。

「こころぼそいってなあに?」

 先日、スーパーで買い物を済ませ駐車場を歩いていたら、小さな女の子に声をかけられた。女の子は私を見つけるとトコトコと駆け寄ってきて、唐突に言った。

 「迷子になっちゃった」

 秋の札幌の駐車場で迷子の告白である。思わず辺りを見回したが、確かに親らしき人の影はない。聞けば母親と一緒に買い物に来たが店の中ではぐれてしまい、一人で車に戻ろうとしたものの、駐車場所が分からなくなってしまったのだと言う。

 「ここだと思うんだけど……」

 小さな指で示すのは、残念ながら完全に私の車である。取りあえず二人で店に戻り、サービスカウンターへ向かうことにした。夕方に近い時間で、空は既に日が暮れかけている。年は5歳だと言った。手をつないで歩きながら、

 「迷子になって心細かったね」

 と話しかけると女の子は少し考えた後で、

 「こころぼそいってなあに?」

 と言った。

 言われてみれば、あの時の私も「心細い」という言葉は知らなかった。今から半世紀近く前、生まれて初めて足を踏み入れた青森で、生まれて初めての迷子になった日のことである。小学1年生だった。ねぶた祭りの見物がてら、青森で暮らす親戚の元を母や伯母たちと訪ねたのだ。