仕事も遊びも、楽しく頑張るのは好きだけど、でもちょっと最近息切れ気味…。そんな胸突き八丁のARIAなお姉さまがた、こちらでちょっと一服していきませんか? 皆さんをお迎えするのは、「覇気がない」を自認する北海道在住のエッセイスト、北大路公子さん。50代実家暮らし、お酒をこよなく愛するキミコさんが切り取る日常は、役に立つ話はほぼゼロ! しかしながら、そのゆるさと無駄にさえわたるユーモア、並みの高級エステより癒やし効果抜群かもしれません。

「犯人はどういう人物でしたか?」

 年々「得体(えたい)の知れなさ」が深まっている気がする。たとえば、私が何か重大な罪を犯したとしよう。人を大勢殺したりとか、魔性の女として世界中の男から大金をだまし取ったりとか、国宝に火を付けて燃やしたりとかだ。私は本当に人柄がよく、「原稿を書かなくても人柄にお金くれないかな」と常々言い続けているくらいの人間だが、それでも人生何が起きるか分からない。希代の犯罪者となった私の家には、当然マスコミが押し寄せる。彼らは近所の人を片っ端から捕まえては尋ねるだろう。

 「犯人は一体どういう人物でしたか?」

 ご近所さんは皆口をそろえてこう答える。

 「とても人柄がよかったです」

 ……ということには賭けてもいいが、絶対ならない。現実には困惑の表情を浮かべつつ、しかし異口同音にこう答えるはずだ。

 「得体の知れない人でした」

 そらそうでしょうよ、ともし逮捕後の留置所でテレビが見られれば、私も盛大に膝をたたきたいところだ。なにしろずっと家にいるのだ。この場合の「ずっと」とは、1日中という意味であり、同時に「ここ30年」という意味でもある。20代の頃に家に戻ってのち、結婚をしている風でもなく、かといって勤めに出ている気配もなく、もちろん悠々自適の資産家の雰囲気などみじんも感じられず、それなのに「ずっと家にいる」のである。

 「得体の知れない人でした」

 そう言う以外に言葉が見つからない。