前回記事『親に突然介護が必要になったら 情に厚い人こそ注意して』では、家族に介護が必要になったときには仕事は続けたまま、介護のプロとチームをつくってケアプランを立てることが重要だとお伝えしました。今回は、介護離職を避けるために社員および上司と人事が知っておくべきことと、介護に直面した際に必要な情報収集法について、仕事と介護の両立のプロである酒井穣さんに伺います。

(1)親に突然介護が必要になったら 情に厚い人こそ注意して
(2)介護離職を避けたい 上司と社員、人事が知るべきこと ←今回はココ
(3)要介護=かわいそうではない 最後まで輝ける人生とは

あなたも、同僚も、部下も介護に直面する

 現在、あなたの職場の同じ部署に、介護をしながら仕事をしている人はいますか? 「うちはチームのメンバーが若いから、親の介護をしている人はいないはず」と答えるかもしれませんが、実はあなたが知らないだけかもしれません。

 大手企業で働く2500人を対象に私たちリクシスが調査したところ、「現在、要介護認定者を日常的にサポートしながら仕事をしている」と答えた人は20代で33人に1人、30代で17人に1人いました。実際のデータからわかる通り、若いから介護とは無縁という考えは間違いです。

「現在、要介護認定者を日常的にサポートしながら仕事をしている」人の割合20代…33人に1人30代…17人に1人40代…13人に1人50代… 7人に1人60代… 9人に1人
出典:リクシスが「LCAT 仕事と介護の両立支援クラウド」を利用し、国内の大手企業に勤める2500人に2019年に調査した結果より

 1人の働き手に介護の負担がかかっている背景には(1)ひと昔前に比べて兄弟姉妹の数が少なくなったこと(2)共働き世帯が増加し専業主婦が減ったこと(3)高齢者の数が増えているのに現役世代の数は減っていること、があります。夫婦それぞれが親の介護を行うというケースも増え、現代では「息子介護」も当たり前になりました。公的な老人ホームは常に満床で、民間の老人ホームは高額――つまり、働き盛り世代による在宅介護が必須となる時代なのです。

 私たちの別の調査結果として2023年までにビジネスパーソンの4人に1人が仕事と介護の両立に直面することも分かっています。4名以上の部下を持っている管理職であれば、この問題を直視せずに人員計画を立てることはできないはずです。団塊の世代が後期高齢者である75歳以上となる2025年以降、要介護者はますます増加していくことは確実です。

 親に介護が必要になったとき、あなたはどうしますか? あなたの部下に親の介護が始まったとき、どうしますか? 介護は、今日(いまこの文章を読んでいる最中)にも突然始まるかもしれないのです。