親がこの先、病気になったり介護が必要になったりしたときに備えて、元気なうちにいろいろ話しておくのは大事なことです。でも実際は、コミュニケーションをスムーズに取るのは難しいもの。「親のホンネ」を探りつつ、安心して過ごしてもらうために子ども世代はどう接すればよいのか。90歳を超えた母親と同居しながら、民生委員として多くの高齢者と接している介護・福祉ライターの浅井郁子さんと考えていきます。今回のテーマは「介護」です。

編集部(以下、略) 親の介護について不安を感じている読者はとても多いです。浅井さんの新刊『突然の介護で困らない! 親の介護がすべてわかる本』に、「年代別人口に占める介護認定者の割合」というデータがありましたが、70代後半で10%台、80代前半でも30%弱なんですね。それが、85歳を過ぎたら約60%と一気に多くなる。

浅井郁子さん(以下、浅井) 親が85歳くらいになる子どもの世代は55歳前後でしょうから、50代に入ると親の介護問題が現実的になる人は多くなりますね。いつかは直面するけれども、まだ始まっていない。だからこそ介護に対して不安感が募るのかもしれません。

 ところで、よく「介護は突然始まる」っていう言葉、聞きませんか。

―― 聞きます聞きます。だから、早めに備えておくことが大事なんですよ、と。

浅井 「介護は突然始まる」が合言葉のようになっているのは、まさしく介護への関心や注意を促すためという面もあると思います。私の書籍のタイトルにも入っていますしね。でも、それっていいことかな? と最近思うこともあって。だって「突然」って嫌じゃないですか?

―― 嫌です。怖いです。

浅井 だから、なるべく「突然」にしなければいいと思うんです。介護がいつか始まると身構えるのではなく、親のことにちょっとずつ関心を持ち始めて、親と関わる小さな経験を積み重ねていく。そうすれば、いざというときもあまり慌てなくて済むのではないか、と。

「介護予防」の段階から、少しずつ親の暮らしに関わる

―― 確かに、日ごろから親と関わることに慣れておくと、変化にも早めに気づけそうです。介護の始まりは、どのような状態になったときと考えればいいでしょうか。

浅井 親が、今まではできていたちょっとしたことができなくなったとか、約束を忘れる、好きな趣味をしなくなった、病気の症状が出てきたなど、生活に少し変化が見られることを知ったとき、でしょうか。

―― そんなに早い段階で、ですか?

浅井 実際に介護が必要になるというより、「介護状態にならないための介護予防の段階」から少しずつ関わるのが、子どもにとっての親の介護の入り口と私は考えています。そんなに大げさなことではないんですよ。例えば運動教室に行き始めたら、「運動教室ってどんな感じ?」と興味を持って話を聞いてみるとか。親の今の暮らしの情報を収集することが介護の第一歩という考え方ですね。

「いざ介護」で慌てないために、介護予防の段階から少しずつ親の暮らしに関心を持ってみて
「いざ介護」で慌てないために、介護予防の段階から少しずつ親の暮らしに関心を持ってみて