「自分自身の気になること」を話して反応を見る

浅井 中高年の頃までの親に普通に言っていたことを、高齢になって同じように指摘したらキレられることがあります。衰え始めたことによる焦りかもしれませんし、子どもから指摘されることが不愉快なのかもしれない。言い方も関係しているかもしれません。いずれにしても、高齢者特有の複雑な心情があるようです。

 対策としては、指摘するのではなく、子どもが自分の話をしながら親の反応を見ていくといいと思います。例えば、「お母さん(お父さん)は血圧の薬をいつから飲んでいるの? 私も最近気になってきちゃって」と、「自分のために知りたいこと」として聞いてみる。子どもも40~50代になってくれば、筋力が落ちたり、人の名前が出てこなくなったりするもの。そういう会話をする癖をつけていけば、親も不安に思っている症状を話してくれると思います。

 また、たまに会ったときに一緒に散歩するのもいいですね。親の体の様子が分かりますし、歩く速さがどうといった会話も自然にできそうです。そういう「共有できる何か」を見つけてみましょう。

―― 日ごろからのコミュニケーションで、自然に情報交換できるようにしておくといいんですね。

浅井 一言で言うと、「親の暮らし」を見つめることです。高齢になったら病気もするし、機能低下もします。でも、暮らしていければいいわけです。暮らしの中には、趣味もあれば食事や人間関係など、いろんなことがあるでしょう。そういうことが老化に伴い変化していくと思うので、その変化を子どもは大きく受け止めながら、親の暮らしをサポートしてあげるというイメージです。何でもかんでも整えてあげようとせずに、ね。

―― 子どもも自分の生活で忙しいですし、なまじ「情報」はいろいろ持っているから、つい効率よくとかこうやったほうがいいよとか、親を自分のペースに持っていこうとしがちかもしれません。「親のペースを尊重する」、心掛けたいと思います。

浅井 人って80代になっても90代になっても、できるだけ変わらない暮らしを続けたいと思っているんですね。だから、親子間ではプロセスが大事です。将来、施設入居という結果にたどり着いたとしても、プロセスが丁寧ならば、後悔を残さずに済むと思います。

文/浅井郁子 イメージ写真/PIXTA