親の自尊心は少しずつ傷ついているかもしれない

―― 冒頭の話題に戻りますが、年齢と共にいろいろなことができなくなりつつある親への接し方で、具体的な注意点があるとしたら何でしょうか。

浅井 同じことを伝えるにも、親の気持ちを想像して話すのと、子どもが自分の立場を重視して話すのとでは、親への響き方が異なるでしょう。例えば家族以外の第三者が入った場で、外の人に対して親がきちんと対応できなくなっているとき、人前でつい親を叱ってしまったりしませんか? 「お母さんダメじゃない、人に迷惑をかけちゃ」「それ、前もって言われていたんでしょう。なんで準備しておかなかったの?」、などなど。実は私もやってしまいます。

―― ああ、言ったことあるかも……。

浅井 昔は親が子どもに同じことを言っていたんですよね。でもそれが逆転してしまう。子どもは親のことをフォローしているつもりなのですが、指摘された親にしてみれば、少しずつ自尊心が傷ついているかもしれません。

 親は自分が衰えていること、現役時代とは違うことを分かっているし、コンビニやスーパーの支払いがセルフレジになったりするような社会の変化に対応できるかという不安を抱えながら日々生活しています。一方で、ちゃんと適応できているのに、見た目などから年寄り扱いされることに不満を持つ高齢者もいるでしょう。

 離れて暮らす親は今、ペットボトルの蓋が開けられなくて、家の中で20~30分格闘しているかもしれない。そういうちょっとしたことが高齢の親には日々起こっていることを、子どもは想像してあげられるといいですね。

気になる親の健康状態 「怒りスイッチ」に注意

―― この連載では、親の変化で気になることをさまざまなテーマで考えていきますが、まずはやっぱり「健康」のことかなと思います。子どもはどんなふうに親の健康状態を把握し、フォローしていけばいいでしょうか。

浅井 まず、親の持病を知ることですね。70歳を過ぎればいろいろな症状が出てくるものですが、子どもはよく知らないと思います。話のとっかかりとして、お互いの健康診断の数値を見せ合ったりするのはどうでしょう?

―― 自分と親の健康診断の数値を比べてみるんですか。

浅井 はい。親の健康状態が分かりますし、かかりつけ医に定期的に通院しているかなど、基本的なことを知るきっかけにもなります。自分のほうが悪い数値があったりしたら、そこから会話が広がるかもしれませんね。

 一つ注意してほしいのが、「やせた」「血圧が高い」など、親に久々に会ったときに気づいた変化を、すぐに指摘しないこと。親自身が気づいていることもあるので、指摘の仕方によっては親の怒りスイッチを押してしまうこともあります。

―― 怒りのスイッチ! そんなものがあるのですか。