ここ最近、経済ニュースなどで頻繁に目にする「メタバース」の文字。「インターネット上の仮想空間」と説明されることが多いですが、注目度が高い割に実体がいまひとつ分からないという人も多いのではないでしょうか。メタバースとは一体何か、人々の生活やビジネスをどのように変える可能性があるのか。メタバースのプラットフォーム「cluster(クラスター)」を運営するクラスター代表取締役CEOの加藤直人さんが基本から解説します。

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(2)メタバースは老いも身体的ハンディも無関係の自由な世界
(3)引きこもりは地球に優しい? メタバースが導く未来とは ←今回はココ

メタバースを活用したビジネスの現状は?

編集部(以下、略) 最近はIT系以外にもさまざまな業種の企業が、メタバースを活用した新サービスなどを発表しています。ビジネスとしてのメタバースの可能性について、加藤さんはどう考えていますか。

加藤直人さん(以下、加藤) まず初めのフェーズとしては、リアルの世界で行われているビジネスの売り上げを、メタバースを活用してより伸ばす、といった形で発展していくのかなと思っています。

 これまでのビジネスって、何かしら「物質」にとらわれているわけですよね。純粋にデジタルだけで完結するビジネスってなかなか存在しない。例えばインターネット広告はデジタル上のビジネスですが、宣伝している内容は物理的実体のある化粧品だったりします。

 僕たちの会社が運営しているメタバースのプラットフォーム「cluster(クラスター)」では日々さまざまなイベントが行われていますが、企業の商品紹介やキャンペーンの場として使われることが多いんですね。例えば日清食品の焼きそば「U.F.O.」がスポンサーを務めたバーチャルライブを開催したときは、バーチャル空間にU.F.O.がぽこぽこと飛び交いました(笑)。リアルのライブでは絶対にありえない光景ですが、参加者が面白がってUFOのパッケージを飛ばす操作をするんです。それで、ライブ終了後にみんなU.F.O.が食べたくなって買いに行く、というように。これは完全に、現実世界のビジネスをよりドライブするためにバーチャル空間が活用されているわけです。

 ファッション業界でも同様のことが行われています。米国でものすごい人気を博している「フォートナイト」というオンラインゲームがあって、日本にも多くのユーザーがいますが、ハイブランドの「バレンシアガ」がこのゲームとコラボレーションをしました。デジタル空間でゲームのキャラクターが身に着けるコラボアイテムを購入できるというものですが、これも、リアルでも商品を買ってもらうことが狙いです。

 このように、現実が主でデジタルが従という関係性の中で発展するのが第1フェーズで、第2フェーズになると、メタバース空間自体でビジネスをする人たちがどんどん出てくると思います。

「今のメタバースを取り巻くビジネスは、現実が主でデジタルが従という関係性の中で発展している段階ですが、いずれメタバース空間自体でビジネスをする人たちが出てくると思います」(加藤さん)
「今のメタバースを取り巻くビジネスは、現実が主でデジタルが従という関係性の中で発展している段階ですが、いずれメタバース空間自体でビジネスをする人たちが出てくると思います」(加藤さん)