『ボヘミアン・ラプソディ』の主人公そのもの

 そして2019年12月11日、12日と東京・有楽町の国際フォーラム(ホールA)で、計2万人のお客さまを集めた「氷川きよしスペシャルコンサート~きよしこの夜Vol.19」が行われました。その当日。

 『それぞれの花のように』から始まり、氷川さんは着物姿から髷(まげ)付きの紋付き袴で『浪曲一代』『白雲の城』などを朗々と歌ったかと思うと、いきなり真っ赤なエナメルのホットパンツにロングブーツで白い太もももあらわにクレーンに乗ってのロックな『確信』と『限界突破×サバイバー』を歌い、会場は絶叫に次ぐ絶叫。サイリュウムが振られ、スモークがたかれて。

 さあ、そしていよいよ『ボヘミアン・ラプソディ』。これが本当にすごかった!! スクリーンに映った遠くを見つめる氷川さんの目が、氷川きよしではなく、全く別人格の顔になっていたのです。もちろんフレディ・マーキュリーの「モノマネ」ではなく、完全に『ボヘミアン・ラプソディ』の主人公そのもので、見事な表現者になりきっていました。

 知らず知らず、私の頬には涙が流れていました。氷川さんは、「フレディという人も、華やかなように見えても孤独を抱えて、人間として見られない寂しさを抱えていた。そんなフレディの思いを感じながら日本語で伝えたかった」と語っていましたけれど、まさにそうだったんだ! と納得できる、それは見事な歌でした。

 どんなに苦しくても、寂しくても、スター歌手は孤独な魂のアスリートです。誰も代わることはできないし、常に完璧なステージと笑顔だけを求められる孤独な存在なのだ、という哀しみが、華麗な矢となって私の心臓に星のように降り注いだ、そんな忘れられない一夜となったのでした。

『ボヘミアン・ラプソディ』を歌う氷川きよしさん(長良プロダクション提供)
『ボヘミアン・ラプソディ』を歌う氷川きよしさん(長良プロダクション提供)

文・写真/湯川れい子