まず『ボヘミアン・ラプソディ』という楽曲の日本での著作権管理を委託されている音楽出版社に問い合わせてみると、この曲に関してはクイーン側からまだ一度も日本語にする許可が下りていない、ということなのです。

 そこで、まずはその音楽出版社にお願いをして、日本の氷川きよしという20年の見事なキャリアを誇っているトップ歌手が20周年の記念コンサートのステージで歌うこと、それを音楽評論家としてもクイーンにインタビューをしてきた、日本作詩家協会の会長でもあった私が訳詞をすることを条件に申請。一度日本語にしたものを、もう一度英語に直してクイーンの側に送って、無事に許諾が下りたのです。

仮レコーディングでは感情移入が難しかったけれど…

 『ボヘミアン・ラプソディ』は難しい歌です。オーケストラとコーラスが華麗に派手にからみ合っているから、とても壮大で歌いやすそうに聞こえますけれど、ソロで歌うパートはそう多くないし、言葉数も少なく簡潔で、まさにオペラ仕立ての楽曲なのです。

 「こんなスカスカの隙間だらけの歌、難しいよねえ~」と言いながら、氷川さんと私がお互いに時間がつくれた日の夜、私の家のキッチンのカウンターで練習をして、もう一度言葉のハメかたを考え、次は先に録音したオーケストラやコーラスの音に合わせて、スタジオで仮レコーディング。そのときはやっぱり感情移入まではまだまだできず、歌はスカスカでした。

 氷川さんは一日のハードワークが終わった後のスタジオ入りだったし、私も当日は山口で行われた「山口市はクリスマス市になる」という大きなイベントから帰って来た夜で、もうよれよれで髪はもしゃもしゃ。仮レコーディングの帰り道、疲れ切っていたきよし君に、「歌おうとしなくてよいからね。身体の中にしっかりとメロディーだけ入れて、あとはドラマとして、主人公になりきって演じてみてね!」と言って別れたのですが……。

山口で行われたイベントで。教会で歌った作曲家の宮川彬良さん、ル ヴェルヴェッツの佐藤隆紀さん、佐賀龍彦さん、VOJA-tensionさん、クミコさんと
山口で行われたイベントで。教会で歌った作曲家の宮川彬良さん、ル ヴェルヴェッツの佐藤隆紀さん、佐賀龍彦さん、VOJA-tensionさん、クミコさんと
イベントから帰ってきた夜、氷川さんと仮レコーディングをしたときの様子
イベントから帰ってきた夜、氷川さんと仮レコーディングをしたときの様子