音楽評論家、作詞家として50年以上のキャリアを持つ湯川れい子さん。国内のみならず世界中のスターやアーティストと親交を深めてきました。そんな湯川さんによる自筆のコラムです。世界中のアーティストとの交流、昨今のエンターテインメントについて考えていること、さまざまな土地を旅して感じていることなどをつづってもらいました。今回が最終回です。

パンダのシャンシャンが中国へ返還される日が迫る

 ジャイアントパンダのシャンシャンの中国への返還期限が、2020年12月31日と迫ってきました。

 まだ実際は、12月の何日に移送されるのか、シャンシャンを一目でも見られる観覧の終了時期についてなどの具体的な発表はありませんけれど、いくら嘆いても、返還期限が延長されることはありません。

 パンダは化石の記録で見ると、古くは北京周辺からベトナム北部、ミャンマー北部にかけて広く分布していたと考えられていますが、1800年代に毛皮目当ての狩猟ブームが起こって、20世紀に入る頃には絶滅の危機を迎えています。

 そして2000年には中国の国家一級重点保護野生動物に指定されるようになり、特にその手足が高級食材として高価に取引されることから、今では狩猟は重罪とされています。絶滅の危機にひんしたパンダは中国の四川省や陝西省の秦嶺山脈、甘粛省の南部などに約1600頭が生息しているほかは厳重に守られ、保護研究センターなどで手厚く保護されて、現在は200頭を超えるジャイアントパンダが飼育されています。

 そう、かつては1972年に上野動物園に初めてカンカンとランランが来て人気を集め、その後来日したホアンホアンとフェイフェイの間に人工授精でトントンやユウユウなどが生まれて大喜びしたものでしたが、現在はワシントン条約で国際取引が禁止されている関係で、日本で飼育されているジャイアントパンダは、シャンシャンのパパのリーリーも、ママのシンシンも、東京都が2021年2月までの10年間、年間約1億800万円のレンタル料を支払って、中国から貸してもらっているのです。

やっと木登りができるようになったばかりの頃のシャンシャン(奥)と、ママのシンシン(手前)
やっと木登りができるようになったばかりの頃のシャンシャン(奥)と、ママのシンシン(手前)