音楽評論家、作詞家として50年以上のキャリアを持つ湯川れい子さん。国内のみならず世界中のスターやアーティストと親交を深めてきました。そんな湯川さんによる自筆のコラムがスタート! アーティストとの交流、昨今のエンターテインメントについて考えていること、世界中のさまざまな土地を旅して感じていることなどをつづってもらいます。

女の人生は60歳から!

 今、女性4人で、カナダのケベックに来ています。

 ここは広いカナダの中でも、ただひとつフランス語が公用語という州で、人口は約830万人。カナダで1番の都会はモントリオールだけれど、私たちが滞在しているのは、観光地として人気の高いケベック市です。歴史的な要塞の跡や、今は有名なホテルになっているお城だった建物などの周囲には、大きな河や広大な大地が広がっていて、かつてはフランス領だったところだから、お料理やワインが手ごろなお値段で、とってもおいしいのも魅力のひとつです。

「コリー・ハートのコンサートを見て、聴いて、彼にインタビューするために女4人でカナダに来ました」
「コリー・ハートのコンサートを見て、聴いて、彼にインタビューするために女4人でカナダに来ました」

 今回から始まった、この「湯川れい子の今日もセンチメンタル・ジャーニー」という連載。もちろん昨日のことや過去のこともつぶやくけれど、今日や明日、未来のこともじゃんじゃん語るつもりなので、内容がセンチメンタルだというよりも、私の年齢から来るビミョーな味わいのことだと受け取ってください。

 なにしろ、今年私は83歳。一般的にはヒャ~ッ! と言う歳だと思うけれど、自分ではそうは思っていません。きっとあなたもそうだと思うんだけど、みんなそれぞれその歳になってみないと分からないことって、たくさんあるのよね。

 思い返してみると、10代はまだ夢を見ることも具体的じゃなかったし、20代はやみくもにやりたいことに向かって走って、泣いたり転んだり擦りむいたり。でも、怖いことなんて、実は何にもなかった。

 それで、30代、40代は私生活も仕事も、どんどん背中に背負うものが大きく重くなっていって、ヒーヒー言いながらも体力的には頑張れたのが、50代になると、親も友人も含めて、周りがなぜかバタバタと倒れ始めて、さぁ、60代の坂を越すのは、本当に体も心も環境も、いろいろと大変でした。

 それでも60代の坂をやっとの思いで登ってみたら、もうかなり用心深くなっていたこともあって、何とかうまく自分や他人と程よく付き合えるようになってきたし、結構モノの味とか値打ちとかが分かってきて、やっと人生を楽しめるようになっていたんですよね。それで「ああ、女の人生っていうのは、やっぱり60歳からかなぁ~~」と思うようになったり……。

 それが70代になると、どこかずっしりとした湿り気と重さがあって、もう体力的にむちゃはできないけれど、その分、毎日、毎分が貴重で、いとしくて。悲しいとか寂しいとかではなく、若い時ほどキラキラはしていないけれど、もはや何ものにも代えがたいほど尊く大切だなぁ……と思えるようになるんですよ。

 そして80代の今は、そういう意味でのセンチメンタル・ジャーニーなんだけど、もし時間と気分が許したら、ぜひ、のんびりと読んでくださいね。きっと何かお役に立つ情報もあるに違いないと思うから。