「より良い時は必ずやってくる。必ずやってくる」

 ジャニスは、一昨年にはナッシュヴィルの家を売って、冬の無いフロリダについのすみかを求めて引っ越ししたのですが、そのフロリダは今や米国の中でもコロナの患者数が多く、4月に入ると感染者が急速に増加して、大きなニュースになっています。

 そんな時なのにジャニスは、「どうしているの? あなたは大丈夫? 毎日のようにパット(ジャニスの奥さん)と、れい子さんの話をしています。ここは目の前に大きな湾が開けていて海鳥が飛んでいるし、この間は散歩していてマナティ(人魚のモデルになったとも言われる、ジュゴンとよく似た大きな海の生物)と出合いました。東京のような密集した大都会で、外に出られない毎日はどんなにつらいことでしょう。

 私にはもう昔のような創作力はないし、声も我ながらひどいものだけれど、この歌を聞いた人たちが、それぞれに歌ったり、演奏したり、踊ったりしている映像を送ってもらえたらうれしいので、私のささやかな歌、“Better Time Will Come”という歌を送ります。もしれい子さんが日本語にしてくれるとうれしいです」と、歌を送ってきてくれました。

 “より良い時は必ずやってくる。必ずやってくる”と歌われるフォーク調のとてもすてきな歌で、その後ジャニスからは、有名な歌手の仲間たちから次々と参加を表明する歌や映像が届いていると言ってきました。そこで私は日本でも星野源さんという人気アーティストが、同じようなアイデアで大きな話題になっていることと、今は亡き坂本九さんの全米1位を記録した『上を向いて歩こう』という名曲が、宮本亜門さんの企画で大きく広がっていることを伝えると、すぐに九さんが飛行機事故で他界されたことへの追悼の言葉とともに、見事に翻訳された『上を向いて歩こう』の英文の詞が送られてきて、

 「こんな時はメロディーも大切だけれど、自分たちにとって一番身近な言葉こそが心に届くのよね。どうぞ私が日本の人たちを心から心配しているということだけ、皆さんに伝えて下さい」というメールが届いたのでした。

 自分の声の衰えを気にしているジャニスは現在69歳。今もあの独特の湿り気をおびたハスキーで知的な声はそのままで、何か機会があれば、ぜひ聞いて頂きたいと思っています。

 ちなみに今、私が毎晩のようにYouTubeで繰り返し聞いて慰められ、時には涙ぐみ、明日への夢と勇気をもらっている曲を最後に2曲ご紹介しておきましょうね。

 これはチャーリー・チャップリンが、映画「ライムライト」のために1952年に書いた曲で、今は亡きナット・キング・コールとマイケル・ジャクソンが歌う映像が、それぞれ日本語の訳詞と共に流れて、きっとあなたの心を包み込んでくれることでしょう。
1.「Smile」Nat King Cole 米映画「モダン・タイムスModern Times」1936年
2.「Smile」Michael Jackson《日本語字幕・和訳》

文・写真/湯川れい子