音楽評論家、作詞家として50年以上のキャリアを持つ湯川れい子さん。国内のみならず世界中のスターやアーティストと親交を深めてきました。そんな湯川さんによる自筆のコラムです。世界中のアーティストとの交流、昨今のエンターテインメントについて考えていること、さまざまな土地を旅して感じていることなどをつづってもらいます。

公演、講演会、卒業式…3.11の関連イベントも中止

 最初にドカンッ!!と衝撃が来たのは、小・中・高校の休校や、人が大勢集まるイベントはできるかぎり中止にするように、という勧告にも近い要請が出た2月27日でした。

 では、3月11日のコンサートはどうなるのか、実施できるのかできないのか? 「主催者の判断に任せる」ということでしたが、すぐに5月7日に延期することが決定。

 その他にもライブハウスでの公演や私自身の講演会が中止となったり、名誉学校長をしている専門学校の卒業式が卒業生だけの出席となって、私の祝辞もなくなったりするなど、連日のように変更の通知が届くようになりました。

 思いもかけない休日は増えたけれど、中には準備に時間やお金をかけてきたイベントもあります。延期するにしても公演会場の再確保はどうにかなるとして、果たして出演者全員のスケジュールが取り直せるのかどうか? 決して簡単ではありません。

 延期になった3月11日のコンサートは、今年が第8回となるはずだった、東日本大震災で遺児や孤児となった子どもたちの支援事業「全音楽界による音楽会」。毎年サントリーホールの協賛をいただいて行ってきたコンサートで、すでに9割のチケットが動いていました。

 オーケストラや出演者がボランティアで参加するだけでなく、同時に寄付までお寄せいただく珍しいチャリティ形式。「その人が出演するなら、たとえ1曲でも見に行きたい!」と駆けつけてくださるお客様からは、お1人1万円以上の寄付をいただいています。

 クラシック界は作曲家の三枝成彰さん、ポップス・歌謡曲その他は私が出演交渉役のプロデューサーで、今年もデビュー55周年の五木ひろしさん、45周年のゴダイゴさん、20周年の氷川きよしさんなど、出演を申し出てくださった感動の顔ぶれがそろっていたのですが、ガーン! 急きょ5月7日に延期です。

 結果、5月7日は博多での劇場公演が予定されている五木さんと、大阪公演が入っているゴダイゴさん、他のお仕事がある森山良子さんと、さだまさしさんが出演不可能ということが判明。思わず「ううっ!」とうめき声が出てしまうほど、これは痛い、苦しい! 公演まで2カ月もないのに、どうしたものでしょうか、と嘆きました。

 ただ、ありがたいことに、今年は3月11日にスケジュール調整がつかずに諦めていた小林幸子さんと平原綾香さんが、5月7日なら!といち早く出演をご快諾くださって、素晴らしい顔ぶれがそろいそうですから、皆さま、もしコロナが収束に向かってくれていたら、5月はぜひサントリーホールに駆け付けてください!