未曽有のコロナ禍によって、私たちはこれまでのさまざまな「当たり前」を見つめ直すことになりました。「自然、経済、社会の相互関係を認識する機会になっている」と話すのは、「ゴミをゴミにしない」という理念のもと、産業廃棄物の減量化・再資源化98%を達成している石坂産業の代表取締役、石坂典子さんです。用途を持って生み出されたモノが最後に行き着く「廃棄物」という形態。そこから見えてくる目指すべき社会のありようについて、石坂さんが解説します。

(1)レジ袋有料化で考える 循環型経済への転換とSDGs
(2)便利なものは再生しにくい メーカー各社に問いたいこと
(3)廃プラの輸出大国・日本 産廃会社が里山保全をするワケ ←今回はココ

廃棄物の海外輸出から見えてくること

 世界各国では、廃棄物を海外に輸出するということが行われています。日本は、総量は年々減っているものの世界有数の廃プラスチック輸出大国で、2017年までは主に中国へ輸出。しかし同年末、中国が生活由来の廃プラスチックの輸入を禁止したため、現在は東南アジアや台湾へ輸出されています。

 廃棄物処理は環境や人体への影響が懸念されるため、ゴミの海外輸出は国際問題にもなっています。社会的責任を考えたときに、国政として廃棄物を他国へ出す行為は果たして正解なのか。そもそもゴミは宝の山といった言葉も昔からあるように、これからはエネルギーに転換して、大きな価値を生むものになるかもしれません。

 SDGsの達成を目指す世界の動きに意識を向け、グローバルな視点でサーキュラー(循環型の)エコノミーを目指しつつ、そのためにすべきことは実はとてもローカルだったりします。なぜなら日常のゴミ一つとっても、生活している地域から出てくるものだからです。過去、私たちのような産業廃棄物処理業者は地域から反発される存在でした。しかし今は、廃棄物自体が資源やエネルギー源になってきています。廃棄物を地域経済の中で生かし、ゴミをゴミにしないためにどうすればいいか。まちづくりのあり方も変えていくことになるだろうと思っています。

東京ドーム4個分の敷地につくった「サステナブルフィールド」

 私たちの本社と廃棄物処理プラントは、埼玉県三芳町にあります。その周辺の荒廃した雑木林を美しい里山によみがえらせ、保全管理を行いながらサステナブルフィールド「三富今昔村(さんとめこんじゃくむら)」として運営しています。

 全体で東京ドーム4個分となる敷地は、古くは農業用の森でした。しかし時代とともに農業をする方が減り、手入れされなくなった森は荒廃。生態系の連鎖が断ち切られ、絶滅危惧種といわれる日本古来の草花や生物が死滅していくような問題がたくさん起きていました。うっそうとした森には、ゴミの不法投棄が絶えませんでした。

「これからは、廃棄物を資源やエネルギー源として、地域経済の中で生かしていく時代だと思います」(石坂産業代表取締役の石坂典子さん)
「これからは、廃棄物を資源やエネルギー源として、地域経済の中で生かしていく時代だと思います」(石坂産業代表取締役の石坂典子さん)