未曽有のコロナ禍によって、私たちはこれまでのさまざまな「当たり前」を見つめ直すことになりました。「自然、経済、社会の相互関係を認識する機会になっている」と話すのは、「ゴミをゴミにしない」という理念のもと、産業廃棄物の減量化・再資源化98%を達成している石坂産業の代表取締役、石坂典子さんです。用途を持って生み出されたモノが最後に行き着く「廃棄物」という形態。そこから見えてくる目指すべき社会のありようについて、石坂さんが解説します。

(1)レジ袋有料化で考える 循環型経済への転換とSDGs
(2)便利なものは再生しにくい メーカー各社に問いたいこと ←今回はココ
(3)廃プラの輸出大国・日本 産廃会社が里山保全をするワケ

便利で魅力的な商品、廃棄後の環境負荷は?

 私たちがこの20年、建築系資材を中心に廃棄物を見てきて実感していることがあります。それは、廃棄物の「質」の変化です。

 人の暮らしを便利に、豊かにする商品が生み出されていくなかで、素材の耐久性、耐火性、安全性といったものがどんどん高められてきました。こうした利便性の高い商品は、15年から30年くらいのサイクルで廃棄物になるのですが、廃材となったときに、環境への影響が大きくなるものが多いです。

 今から30年くらい前に作られた商品は自然素材を使ったものがほとんどだったので、どちらかというと再生しやすかった。でも、利便性を重視して商品を開発していった結果、例えば塗料の中などに、素材を固めたりくっつけたりする役割で、環境に影響するようないろんなものが入るようになっています。そういう商品は、燃やして処理するしか方法がないのです。

 メーカーとしては、技術の進化を反映し、消費者のニーズをとらえた新しい商品を売っていきたいですから、100年、200年もつようなものは作られません。では15年、30年というサイクルで商品が使われた後、廃棄する際に自然環境への影響はどうなのか、再生品として生まれ変わることができるのか。一度きりで使い捨てるリニア(直線状の)エコノミーから、リサイクルを前提としたサーキュラー(循環型の)エコノミーへ変わろうとする今、建築資材に限らず、これからはどのメーカーもそういうことを想像してものづくりをする時代が来ていると認識する必要があると思っています。

「これからは単に利便性だけでなく、『再生しやすさ』を想像しながらものづくりをする時代が来ています」と話す、石坂産業の石坂典子代表
「これからは単に利便性だけでなく、『再生しやすさ』を想像しながらものづくりをする時代が来ています」と話す、石坂産業の石坂典子代表