未曽有のコロナ禍によって、私たちはこれまでのさまざまな「当たり前」を見つめ直すことになりました。「自然、経済、社会の相互関係を認識する機会になっている」と話すのは、「ゴミをゴミにしない」という理念のもと、産業廃棄物の減量化・再資源化98%を達成している石坂産業の代表取締役、石坂典子さんです。用途を持って生み出されたモノが最後に行き着く「廃棄物」という形態。そこから見えてくる目指すべき社会のありようについて、石坂さんが解説します。

(1) 経済活動は一方通行から循環型への転換が求められている ←今回はココ
(2) 便利なものは再生しにくい メーカー各社に問いたいこと
(3) 廃プラの輸出大国・日本 産廃会社が里山保全をするワケ

一方通行の経済から、循環型の経済へ

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちを取り巻く世の中では今、マクロレベル、ミクロレベルで急速な変化が起きています。「元の社会には戻れない」「これからはニューノーマルへの変革が求められる」などとも言われていますが、改めて世界の状況を見てみると、感染者数は1200万人を超えていて、死者は約56万人(2020年7月14日現在)。日本国内では数値的には小さな枠に抑えられているとはいえ、世界レベルでは勢いが止まらない状況が続いています。

 感染防止に努めるといっても、誰もがステイホームをできるわけではありません。貧困問題が解決できない国もたくさんありますし、ましてやWHOが手洗いやうがいをしましょうと言っても、手洗いをする清潔な水がない国もあります。今まさに、SDGs(持続可能な開発目標)の達成が待ったなしで求められる時代になったのです。

 コロナ禍は、自然、経済、社会の相互関係を認識する機会になったと思っています。私たち廃棄物処理の業界から見ると、これまでの社会は、リニア(直線状の)エコノミーが当たり前でした。自然界の資源やエネルギーを使って生み出されたものは一度きりで使い捨てられ、また新しいものが作られる。一方通行の経済です。それがこれからは、本当の意味で環境に配慮した、サーキュラー(循環型の)エコノミーの時代になっていく、その転換期にあると考えています。

 例えば、コロナの感染予防のために私たちが使っているマスク。布マスクよりも感染予防効果が高いとされる不織布のマスクが大量に消費されていますが、これは使い捨てですから、一度使ったら全部ゴミになります。現在、日本国内だけでも週1億枚が供給されていますが、これらが大量に廃棄されるところまで、想像したことがあるでしょうか?

石坂産業代表取締役の石坂典子さん。「コロナの感染予防をしたくても、貧困状態に置かれ、清潔な水で手を洗えない人たちもいる。今まさに、SDGsの達成が待ったなしで求められています」
石坂産業代表取締役の石坂典子さん。「コロナの感染予防をしたくても、貧困状態に置かれ、清潔な水で手を洗えない人たちもいる。今まさに、SDGsの達成が待ったなしで求められています」