クリエイター・経営者という両立の難しいフィールドで、ともに大成功を収めている池田あきこさん。小さな革工房から始まったメーカー「わちふぃーるど」を創業し、東京・自由が丘に初の直営店をオープンするも、思うように売り上げが上がらない日々が続きます。そんな窮地を救ってくれたのが、わちふぃーるどの未来のスター「猫のダヤン」でした。
(1)「猫のダヤン」池田あきこ 始まりは路上での革製品売り
(2)かわいくて怖い「猫のダヤン」つかみの強さに勝機見た ←今回はココ
(3)欧州で「ダヤン」を売りたい 72歳、仏語を勉強中
直営店は、遊びと商売が混ざった空間に
1983年、2歳の娘を育てながら初の直営店を自由が丘にオープンした池田さん。このショップを立ち上げるにあたり、わちふぃーるどのスター、猫のダヤンが誕生します。
「看板やお店に置く椅子の背に入れるキャラクターを、何か描こうと思ったの。そこで生まれたのが、今やわちふぃーるどの顔となった『猫のダヤン』。その他、今も皆さんに愛されているジタン、イワン、マーシィといったダヤンの仲間たちも、みんなその時に描いたんです。丸いテーブルの周りにその動物たちの描かれた椅子を並べると、まるで会議をしているようになって。そのテーブルに商品である革製品を並べたり、出窓に人形をつるしたり。遊びと商売が混ざったみたいな店を作ったのよ」
単に商品を売るだけでなく「わちふぃーるどの世界観」を表現するため、初めて革以外に絵を描いたのが、この直営店を立ち上げてから少し経った頃でした。
「お店に飾るポスターとして、ダヤンの大きな絵を描いたの。今も使われているこの絵が、私が紙に描いた最初の1枚なんです。私は絵を勉強したこともないし、子どもの頃から絵が大好きだったというわけでもない。でも描いてみたら意外にうまく描けたの。ラッキーじゃない?(笑) 私は革を指で染めるので、同じように紙にパステルで描いてから、指でぼかしてみたの。今も続けているその方法で、ダヤンの絵が生まれたんです」