芸能界の荒波を経験しながら着実に女優としてのキャリアを築き、現在はECセレクトショップ「羽田甚商店」店主という実業家としての顔も持つ羽田美智子さん。2020年にはエッセイで死産の経験も公表し、自らの体験を若い世代にシェアしようという姿勢も。波瀾万丈(はらんばんじょう)な半生を穏やかに受け止めて歩み続けるすべを、語ってもらいました。

(1)名家に生まれ、女優を目指すも両親は猛反対 ←今回はココ
(2)スキャンダルに屈せず女優のキャリアを構築
(3)実家の屋号を復活させるため50歳で起業

席に着いた瞬間「あなたは芸能界に入りなさい」

 伊東四朗さんとのW主演で2003年から続く『おかしな刑事』シリーズ、2010年から続く『花嫁のれん』シリーズなど、長期間愛されるドラマシリーズの主演を務め、女優として確かなキャリアを築いている羽田美智子さん。

 しかしキャリア初期では、所属事務所が決まらなかったり、初主演映画が決まるもののトラブルにより撮り直しになったりと、順風満帆とはいえない状況が続いたといいます。

女優のキャリアを歩みつつ、2019年にはECセレクトショップ「羽田甚商店」をオープンした羽田美智子さん
女優のキャリアを歩みつつ、2019年にはECセレクトショップ「羽田甚商店」をオープンした羽田美智子さん

 「とにかく女優になりたい、という思いで芸能界のことは何も知らずに飛び込んだので、本当に回り道をしましたね」

 羽田さんが高校卒業まで過ごした故郷は茨城県。宮大工として「羽田甚」の屋号を掲げ名工の名をはせた高祖父・羽田甚蔵氏により、江戸時代に建てられた日本家屋で育ちました。甚蔵氏が手がけた擬洋風建築の旧水海道小学校が県の指定文化財として移築・保存され、歴史館として今も活用されています。

 「地元にいた高校生の頃、女優の夏目雅子(故)さんに似ているって、よく言われていたんです。それで、どういう方か知りたくて作品を追いかけているうちにファンになって。主演作の『鬼龍院花子の生涯』という映画を見たときに、すごくカッコよくてすてきだな、この人みたいに映画に出たいな、と思ったんですよね」

 同じ頃、東京の歯科医院に通っているときに何度かスカウトを受けたこともあり、女優になりたいという思いは強くなります。ただそのときは、「芸能界なんてとんでもない!」という両親の強い反対で諦めることに。

 「高校卒業後は東京の短大に進学したんですけど、卒業後の進路でまた悩んで。当時は学生の売り手市場で、何十社もの一般企業から内定をもらえるくらいの状況だったんです。でも私自身には就職するイメージが全くわかず、自分にしかできないことが何かあるんじゃないかって、もんもんと模索していたんですよね

 そんなとき、短大の友人に誘われて当たると評判の占師のところへ。

 「席について『私は何に向いてますか』って聞こうとした瞬間に『あなたは芸能界に行きなさい』って言われたんです。それで自分でも『そうだ、やっぱり芸能界に行こう!』と思っちゃったんですよね(笑)。帰りがけにオーディション情報の専門誌を買って、身長などの条件が合うキャンペーンガールの募集に、手当たり次第写真と書類を送ったんです」

 結果、短大在学中の1988年に見事、日本旅行のキャンペーンガールの座を射止めます。