その人らしさや、生き方のスタイル。どうやらそれは、住まい方にも強くあらわれるようです。この連載ではシングルARIAさんのひとり時間の過ごし方、終の棲家考察、おひとりさま同志の助け合いなどを通じて、自立した大人の女性たちの人生観とすてきな住まいの関係を紹介していきます。先回に続き、都内の中古マンションをリノベーションした、演出家の鈴木裕美さん邸を訪ねました。

(上)この家は「ご機嫌な自分」が保証される場所
(下)来世は子だくさん母。今生は仕事と親友で十分 ←今回はココ

「ご機嫌」を保つ秘訣は、効率のいい抜け感のある「動線」

 「大人として、自分で自分の機嫌を直せる、好きにこだわった住まいをつくりたい」と、中古マンションをリノベーションした演出家・鈴木裕美さん。学生時代に学んだ住居設計の知識をもとに、自分の住まいを設計する際、いちばん重要視したのは「動線」だったそう。

インナーテラス越しの素晴らしい見晴らしが約束されたリビングルーム。築37年の中古マンションをリノベーションした。大きな窓から、気持ちいい風が通り抜ける
インナーテラス越しの素晴らしい見晴らしが約束されたリビングルーム。築37年の中古マンションをリノベーションした。大きな窓から、気持ちいい風が通り抜ける

 「私は、直感的に流れがないと嫌で、通り抜けできることが好きなんです。行き止まりがあるとイラッとくるんですよね(笑)」

 この家のサニタリールームに扉がふたつあるのはそのためだ。「帰宅後、玄関で靴を脱いで、そのままサニタリールームにあがり、服を脱ぎ捨てて、すぐにお風呂に入れるように」「朝、クローゼットで着替えたら、そのまま玄関で靴を履いて出かけられるように」玄関とリビングがサニタリールームを介してつながっていたり、ベッドルームとウオークインクローゼット、バスルームをスムーズに行き来できるように扉が配置されたり。こうした動線のデザインが、「行き止まりのない抜け感」をつくりだしている。

ウォークインクローゼットと直結するベッドルーム。昔洋雑誌で見かけた理想のベッドルームをモデルに造作。「本当はガラス付きの室内窓風にしたかったのですが、予算を聞いて、だったらガラスなしのカーテンで」と即決したそう
ウォークインクローゼットと直結するベッドルーム。昔洋雑誌で見かけた理想のベッドルームをモデルに造作。「本当はガラス付きの室内窓風にしたかったのですが、予算を聞いて、だったらガラスなしのカーテンで」と即決したそう

 「いかに効率的にスムーズに移動できるかを考えるのは、限られたスペースの劇場で場面展開の多い演劇を日々つくっているからかもしれないですね。この場面とあの場面は同じセットでも演じられるとか、役者が演じやすい大道具の配置を考えるとか。つい、効率よく動ける動線や物の配置を考えてしまうんですよね。職業病かな。そういえば、我が家の家具の脚にはすべて、演劇界では知らない人がいないほどの必需品『カグスベール』というシートが貼られています。これを貼ると、重い家具でも一人で動かせるんですよ。掃除や模様替えなどが楽になる。一人暮らしにはおすすめですね

 洗面台にも工夫が満載だ。「私は、アイロンのかかったシャツが好きなんですけど、アイロンをかけるのが大嫌いなので、アイロンがけに至るアクションを最小限にしています。アイロンは常に洗面台に出しっぱなし、省エネタップをつけてコンセントはさしっぱなし。蓋も捨ててタオルで目隠ししていつでもスタンバイ。アイロン台もすぐに出せるように洗面台下に置いています。」

扉がふたつあるサニタリールーム。玄関からリビングへ通り抜けできるようになっている。洗面台横にみえるのが、例のアイロン。アイロン台はすぐとりだせるように、シンクの下に常設
扉がふたつあるサニタリールーム。玄関からリビングへ通り抜けできるようになっている。洗面台横にみえるのが、例のアイロン。アイロン台はすぐとりだせるように、シンクの下に常設