気づかないうちに相手を傷つけたり、自分自身やチームの成長を妨げたり、職場の空気をギスギスさせたりすることがある「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」。アンコンシャス・バイアスについて8万人以上にレクチャーをしてきた守屋智敬さんに聞く連載、3回目は「リーダーが知っておくべき、アンコンシャス・バイアス」。あなたのチームは、活発に意見が出ない停滞感に覆われていませんか? まずは、リーダーがアンコンシャス・バイアスに気づき、行動することが大切です。

(1)あなたにもきっとある!アンコンシャス・バイアスの正体
(2)仕事での成長を妨げる、4つのアンコンシャス・バイアス
(3)チームの重い空気はアンコンシャス・バイアスのせい? ←今回はココ

「決め付け」をしそうなときに有効な2つの問い

―― 前回は、自身のキャリア開発を妨げてしまうアンコンシャス・バイアスについて4つ教えていただきました。今回は「リーダーにありがちなアンコンシャス・バイアス」について教えてください。そもそも「女性がリーダーになるとき」には目に見えないプレッシャーとの闘いがありそうです。

守屋智敬さん(以下、敬称略) 私は「女性リーダー」という言葉をなるべく使わないようにしています。「男性リーダー」とは言いませんよね。つまり、女性リーダーという呼び方には、「女性がリーダーになるのが特殊なことである」という思い込みが潜んでいると思われます。アンコンシャス・バイアスの1つ「ステレオタイプ」です。

【ステレオタイプ】
人の属性や一部の特性を基にした先入観や、固定観念による決め付け。(性別や国籍、人種、出身校、学歴、理系・文系など、無意識のうちに属性で関連づけて特性を決め付けてしまう)

 「女性だから」とか「文系(理系)だから」といった属性を理由に部下の可能性を決め付けているかもしれません。このアンコンシャス・バイアスの影響を減らすために私がお勧めしているのが、以下の2つの問いを自らに投げかけることです。

1.「で、どうする?」
2.「誰のために、何のために?」

 まず、1つ目の問い「で、どうする?」。リーダーがメンバーに仕事を任せたいときや、チーム内である役割を担ってもらいたいときなど、「ステレオタイプ」にとらわれると、属性を理由に「できる・できない」を判断してしまう可能性があります。一人ひとり、それぞれの強みや持ち味があります。人を属性で決め付けようとしたり、いい・悪い、能力の優劣、など比較したくなったりしたら、「一人ひとり違う」という前提に立ち返って考えてみましょう。

 一人ひとりに違いがあり、できることもあればできないこともある。一方で、任せたい仕事、担当してもらいたい役割もあると思います。そこで、それぞれのメンバーに目を向けて「で、どうする?」と自分に問いかけて、任せ方を変える、役割をどう担ってもらえるかをメンバーと対話していく、ということが大切です。属性ではなく、個性に目を向けるために、意識の置き所を変えてみるのです。

 2つ目の問い「誰のために、何のために?」。これも、メンバーと向き合い、どうすればより良い形でコミュニケーションを取れるかを考えるときに、意識の置き所を変えるのに役立つ問いです。例えば、1つのプロジェクトを進めているとき、このプロジェクトは「女性よりも男性が適切」とか「若いほうがいい」などと決め付けてしまうことはありませんか? チームの力は属性で決まるのではなく、目的に対してそれぞれの個性が生かされることで決まるのではないでしょうか。いろいろなことに目配りをすることが必要なリーダーの立場だからこそ、「誰のために、何のために」この仕事を任せるのか、チームを運営していくのか。常に立ち返っていただきたい問いです。

チームのムードが停滞…リーダーが気を付けたいことは?
チームのムードが停滞…リーダーが気を付けたいことは?

―― 少し話は変わりますが「性別で決め付ける」という点では、ジェンダーを取り扱ったCMで「炎上」が起こることがあります。これも「属性による決め付け」が関わるのでしょうか。

守屋 決して炎上させようとは思っていないのに、炎上してしまった、というケースは多々あります。「女性ってこういうところがありますよね」と決め付けるようなメッセージを発信してしまい、そこに批判が殺到したという事例も見受けられます。問題は「属性」に対する決め付けにあります。十把ひとからげにしたものの見方ではなく、「一人ひとり、違う」を大切にした言動が問われると思います。

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