気づかないうちに相手を傷つけたり、自分自身やチームの成長を妨げたり、職場の空気をギスギスさせたりすることがある「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」。アンコンシャス・バイアスについて8万人以上にレクチャーをしてきた守屋智敬さんに聞く連載、2回目は「あなた自身」に焦点を当てます。「変わりたくない」「私なんて、無理」と成長にブレーキをかける、自分の中の「無意識の思い込み」に向き合ってみましょう。

(1)あなたにもきっとある!アンコンシャス・バイアスの正体
(2)仕事での成長を妨げる、4つのアンコンシャス・バイアス ←今回はココ
(3)チームの重い空気はアンコンシャス・バイアスのせい?

「今さら」「でも」「これまでやってきたし」は、思い込みワード

今回は、キャリアの開発を妨げる可能性があるアンコンシャス・バイアスについて聞きます
今回は、キャリアの開発を妨げる可能性があるアンコンシャス・バイアスについて聞きます

―― アンコンシャス・バイアスとは、無意識のうちに偏ったものの見方をすること。この思い込みは、経験したことや過去に見聞きしたことによって作られること、そして、アンコンシャス・バイアスは自分に都合よく物事を捉えたい、という「自己防衛心」から生まれるということを前回は聞きました。今回は、40~50代の日経ARIA読者自身が気づかないうちに抱きがちなアンコンシャス・バイアスを教えていただきたいと思います。

守屋智敬さん(以下、敬称略) 社会人になるのが20代前後として、そこから20年、30年と、お仕事をされている方、特に、同じ環境(職場、職種など)で長く経験を積んでこられた方は、経験の蓄積ゆえのアンコンシャス・バイアスがあるかもしれません。

 心理学的には、アンコンシャス・バイアスは200種類以上あるとされていますが、ARIA読者さんに関係する代表的なものとして「サンクコスト効果」があるかもしれません。

【サンクコスト効果】費やした時間や労力を考えてしまい、やめたほうがいいことでもやめられなくなる

 サンクコストは「埋没費用」ともいいます。せっかくここまで積み上げてきたことを今さら捨てられない。キャリアチェンジすると、これまで費やした時間や労力がゼロになる気がする……などこれまでにかけた時間や労力、金銭などに執着してしまい、今の立場を守りたい、変わりたくない、という思いが強くなります。そんなときに出てくるのが、「今さら」「でも」「これまでやってきたし」という口癖(セルフトーク)です。

 例えば私が聞いたこんなケース。仕事をするとき自分はずっと紙のリポート用紙に手書きでまとめてきた。先輩から教わったやり方で、1枚できれいにまとめきることに自負があった。ところが「エクセル入力でOKです」とか「最低限の情報でいいからクラウドにあげて」などと言われると、「これまでこれでやってきたのに、今さら変えたくない!」となるのです。

 実は私も20年ほど研修講師をしていますが、「対面(リアル)でこそ思いは伝えられる」とどこかで思ってきました。ですが、今回の新型コロナ禍によってオンラインセミナーも伝え手(講師)の工夫次第で、リアルと変わることのない学びを提供できることを感じています。これまでのやり方にこだわるアンコンシャス・バイアスを感じるとともに、それを上書きされたことも実感することになりました。

―― 守屋さんにもアンコンシャス・バイアスがあるとは、安心しました(笑)。

アンコンシャス・バイアスについて8万人以上にレクチャーしてきた守屋智敬さん
アンコンシャス・バイアスについて8万人以上にレクチャーしてきた守屋智敬さん