「無意識のうちに思い込んでいることが、知らない間に相手を傷つけたり、自分自身やチームの成長を妨げたり、職場の空気をギスギスさせることがあります」。そう話すのは、今注目の「アンコンシャス・バイアス」について、8万人以上にレクチャーしてきたアンコンシャスバイアス研究所の守屋智敬さん。ときに自分の成長をも妨げる「無意識の思い込み」に気づき、どう乗り越えていけばいいのか。全3回でお伝えします。

(1)あなたにもきっとある!アンコンシャス・バイアスの正体 ←今回はココ
(2)キャリア開発に影響するアンコンシャス・バイアス(仮)
(3)リーダーが意識しておきたいアンコンシャス・バイアス(仮)

誰にでもある、日常の至るところに潜む「思い込み」

―― 今、多くの企業が「アンコンシャス・バイアス」に注目し、管理職研修などに取り入れています。まずは、この「アンコンシャス・バイアス」って何? というところから教えていただけますか。

守屋智敬さん(以下、敬称略) では、早速ですが質問です。次のような日常を送っている人がいます。この人物に対してどのようなイメージが浮かぶでしょうか。性別、職業、年齢、家族構成など直感に従って思い描いてみてください。

―― 朝夕に家事、在宅勤務、スーパーへ買い物……ARIA読者に近い、働く女性をイメージします。

守屋 実はこれ、私の1日のスケジュールです。「50歳、男性、共働き夫婦、仕事は研修講師」これが答えです。

―― なんと! いきなり「思い込み」にとらわれていました。

守屋 この質問を研修などで問いかけると、9割近くの方が「女性」をパッと思い浮かべるようです。もちろん中には「これ、うちの夫です!」や、「これ、僕です!」と「男性」を思い描く方もいらっしゃいますが。外資系企業などでいろいろな国の方にもお話ししてきましたが、この質問を投げかけると、国籍に関係なく、女性を想像される方が多い。意外と、日本人だけが持っている思い込みではないんだなぁ、と。

 ここでお伝えしたかったことは、私たちは過去に見聞きしてきたことに影響を受けて、「家事をして、夕食の希望を聞くのは、普通は女性だ」といったように、無意識のうちに偏ったものの見方をすることがあるということです。過去の経験、見聞きしたことが自分にとっての「当たり前」を知らず知らずのうちにつくっているともいえるでしょう。こんな風に無意識のうちに事実とは異なるものの見方をしてしまうことが「アンコンシャス・バイアス=無意識の思い込み」です。

 もう1つ、質問があります。

―― あ、私はAのうれしいです! 褒められている気がします。

守屋 僕も「若く見えますね!」と言われると、うれしくなります。でも、昔は「若く見えますね」と言われると、すごく嫌な気持ちになっていました。若く見られたくないという気持ちが強く「どうやったら年相応に見えるだろうか?」と悩み、ひげを生やしていた時代もあったほどです(笑)。

―― そうなんですね。確かに私も、若い頃は見た目に貫禄がほしいと思ったこともあります。

守屋 何をお伝えしたかったかというと、「私が言われてうれしい言葉が、必ずしも相手にとってうれしい言葉であるとは限らない」ということです。人によって「解釈」は異なるということ。「こう言われたらうれしいに決まっている」や、逆に「こう言われたらショックに決まっている」といったアンコンシャス・バイアスは、知らず知らずのうちに、相手を傷つけてしまうことがあるのです。

―― なるほど。加えて「誰に言われるか」とか、時と場合によっても違うかもしれませんね。

守屋 アンコンシャス・バイアスは、私たちの日常にあふれています。「これまでのやり方や前例に固執してしまう」「何をするにしても相手との上下関係を意識してしまう」「普通は○○だ、大抵○○だ、という言葉を使うことがある」「事務的なこまごました仕事は女性がやるもの」――いろいろな思い込みが、瞬時の判断や考え方、人間関係にも大きく影響を与えているのです。

アンコンシャス・バイアスを形成する決めつけ、押しつけにはどんなものが? 次ページ以降で説明します
アンコンシャス・バイアスを形成する決めつけ、押しつけにはどんなものが? 次ページ以降で説明します
「いろいろな思い込みが、瞬時の判断や考え方、人間関係にも大きく影響を与えています。その思い込みがチームの雰囲気を悪くしたり、あなた自身のキャリアの成長を妨げてしまったりすることもあります」(アンコンシャスバイアス研究所の守屋智敬さん)
「いろいろな思い込みが、瞬時の判断や考え方、人間関係にも大きく影響を与えています。その思い込みがチームの雰囲気を悪くしたり、あなた自身のキャリアの成長を妨げてしまったりすることもあります」(アンコンシャスバイアス研究所の守屋智敬さん)