「自宅で家族とともに最期の時間を過ごしたい」。そんな患者の希望にとことん寄り添う診療所がある。京都府にある渡辺西賀茂診療所だ。理事長の渡辺康介さんは、自分たちの行う訪問診療を「おせっかい」と称する。そのおせっかいがあるからこそ、多くの患者とその家族が、死という不幸を、幸福な時間と共に迎え入れることができるのだという。第3回は、訪問診療を支えるチームワークと在宅医療の今後について話を聞いた。

(1)「家で自分らしく死にたい」僕が訪問診療を始めたワケ
(2)おせっかいが世界を回す 在宅医療は地域密着であるべし
(3)在宅医療はチームワーク ぶれても話し合って前進する ←今回はココ

状況によって変化する在宅医療のチーム

編集部(以下、略) 在宅医療を受けたい場合はどこに相談するのですか?

渡辺康介さん(以下、渡辺) 我々には病院から相談が来るケースが多いです。在宅医療・介護連携支援センターという医療と介護の間の橋渡しをする機関が行政区ごとにあります。医師会がベースとなって運営されています。

 地域包括支援センターのケアマネジャー(以下、ケアマネ)から「こういう先生いませんか」と照会が来て連携することもあります。

 在宅医療はチームでの仕事。症状によってチーム編成は変わります。リハビリが必要になったり、デイサービスが必要になったり。そのサービスの組み立てはケアマネの仕事です。介護と医療の組み立てをする力が必要。

 うちの診療所にもケアマネは所属しています。ケアマネにとっても、がん末期患者を診ると勉強になるので、積極的にやらせています。うちは医療法人だからそれができるけれど、営利目的の株式会社だとなかなかできないので、学べる機会を設ける必要があると思う。言葉を選ばずに言えば、ケアマネのさじ加減で患者の環境が変わるからです。

―― 誰でも希望すれば在宅医療を受けられるのでしょうか。

渡辺 在宅医療は緩和ケアなど苦痛をコントロールできるということが前提です。そのために、うちには緩和ケアのスペシャリストもいます。七転八倒して苦しんでいるのに無理に家で過ごしてほしいと誰も思わないですから。家族も、苦しみがコントロールできていなければ病院に入れたがります。

 緩和ケアはがんに対するものだけでなく、心臓など終末期のいろいろな身体的苦しみを軽減すると同時に、不安や抑うつなど終末期の精神的な苦しみの緩和も必要です。薬などを使って痛みを取って初めて精神的なケアができます。それに、患者さんの中には家族の世話になることに気兼ねする人もいる。

 落ち着いた日常生活が送れた上で、家族と一緒に過ごせるという状況が担保できないと在宅看護はできないのです。だから、どんな患者さんでもできるとは限らない。

渡辺西賀茂診療所 理事長 渡辺康介さん
渡辺西賀茂診療所 理事長 渡辺康介さん