「企画書がうまく書けない」「プレゼンに失敗した」「リモートワーク中のコミュニケーションで、誤解を生んでしまった」…。こんな悩みはすべて、あなたの「文章力」のせいかもしれません。社会人になって、名刺の渡し方などのマナーは教わったけれど、仕事で必要な文章力は自力で育んできたという人も多いはず。でもその文章、正解ですか? これまでに200冊以上の書籍ライティングに関わり、文章のプロによるスキル本を100冊分読み込むなど、文章術を研究しつづけるライターの藤吉豊さんが「社会人たるもの持っておくべき文章力」について解説します。

(1)文章のプロ・藤吉豊 「文章力が高い人は、年収も高い」
(2)ビジネス文書に「文才」はいらない デキる人の文章術 ←今回はココ
(3)メール冒頭の3行で分かる 仕事がデキる人、デキない人

ビジネス文書の良しあしに「文才」は必要ない

編集部(以下、略) 前回記事『文章のプロ・藤吉豊 「文章力が高い人は、年収も高い」』では、ビジネスマンにとっていかに文章力が大事か教えていただきました。良い文章を書きたいとは思っていても、そもそも「文才」がない場合はどうすればよいのでしょうか。

藤吉豊さん(以下、藤吉) ビジネス文書を書く際に才能やセンスは必要ありません。小説や随筆に求められる美しい表現は必要なく、「情報を正確に、読みやすく伝える」ことができればいいわけです。書き方の基本さえ分かっていれば、「誰が読んでも正確に伝わる文章」を書くことができます。

―― 書き方を知れば、誰もがうまくビジネス文書を書けるようになるということですね。

藤吉 そういうことです。ここからは、その基本の中でも絶対に外してほしくない5つについて、1つずつお伝えしていきたいと思います。

 まず何よりも大事なのは、文章をシンプルに書くことです。具体的には、「なくても意味が通じる言葉を削る」ことです。

 無駄が多い文章は、読み手に負担をかけるので、意味が伝わりにくくなるんです。以下の文章も、無駄を省けば、ここまでシンプルにできます。また、文章を短くすると、「最も適した言葉」を選ぶようになるので、書き手の主張がはっきりします。

×悪い例
世界中の至るところすべてで、とても大きな被害が発生する状況が続いているのです。

○良い例
世界中で大きな被害が出ています。

藤吉 1つの文の中に入れて良いのは1つのメッセージ(意味)だけというルールを守れば、さらに読みやすくなります。

×悪い例
会議は明日の午前9時から、本社3階の第1会議室で行い、新商品の販売促進プランについて話し合います。

○良い例
会議は明日の午前9時から行います。場所は本社3階の第1会議室です。新商品の販売促進プランについて話し合います。

―― 確かに、悪い例より良い例の方がすっきりと読みやすく、理解するスピードも断然速くなりました。

藤吉 大学生や社会人に文章指導をする中で、「文章に苦手意識を持つ人には、いくつかの共通点がある」ことが分かってきました。「1文が長い」ことのほかに「文章の流れが悪い」「論理展開が破綻している」「情報に過不足がある」「結局何が言いたいのか分からない」ことが挙げられます。

―― そういった人にはどのような指導をされるのですか?