夢中で働いてきた女性たちが、本格的に「定年後」に直面するのはこれから。「会社という束縛から解き放たれて自由に過ごせる時間は、女性の場合は約30年もあります。やりたいことにチャレンジするためには、この間の暮らしを支えるお金にめどをつけるところから」と話すのは、書籍『「サラリーマン女子」、定年後に備える。』の著者で確定拠出年金アナリストの大江加代さん。「定年後」への不安をなくし、自分らしくセカンドステージを輝かせるためにやっておくべきことを、大江さんに教わりました。

 前回の記事「定年後の働き方、あなたに合うのは? 5タイプから診断」では、「再雇用」「転職・再就職」「起業」「フリーランス・業務委託」「NPO・コミュニティービジネス」という5種類の働き方のタイプ診断と、「再雇用」「転職・再就職」のポイントを紹介しました。

 今回は、「起業」「フリーランス・業務委託」「NPO・コミュニティービジネス」という3種類の定年後の働き方について、知っておくべきことを解説します。

「起業」はやりたいことがある人、組織に縛られたくない人に

 起業は、「やりたいこと」や「好きな仕事」などが明確にあり、それを誰からも束縛されることなく、自分の裁量で自由に仕事をしてみたい人に向いています。

 ただ、起業してすぐに安定収入が得られるようなケースはまれ。顧客を得るための地道なPR活動をいとわずできること、さらに事業がたとえ失敗したとしても経済的には困らないことが前提条件となります。

 経済的に厳しそうな場合、現在の勤め先が副業を認めているようなら、「再雇用で一定の収入を得ながら、やりたい仕事を副業として起業する」ことも一つの手。そうすれば、自分のペースで事業を軌道に乗せていくことができるはずです。再雇用終了後は、起業した事業をメインの仕事として、自分が辞めると決めたそのときまで、「やりたいこと」を続けることができます。

 いずれにしても、定年のない「生涯現役」は起業した人の特権です。

自分が辞めると決めるまで働くことができるのが「起業」する魅力
自分が辞めると決めるまで働くことができるのが「起業」する魅力
定年後の「起業」で心掛けたい3つのこと
1.ローリスク&ミドルリターンを目指す
収入を増やすこと、事業を拡大することを目指すよりも、そこそこの収入でも事業が安定していればOKと割り切るのが長続きのコツ。リスクを取ることはおすすめしないので、借金はしないこと。

2.「生涯現役」もOK! 引退時期を見据えて働き方を調整
雇われの身ではないので、いつ引退するかは自由に決めることができます。細く長く働き続けて「生涯現役」を目指すことも可能。引退時期を見据えながら、年齢に応じて無理のない働き方や事業形態にシフトしていくことも意識しましょう。

3.「やりたいこと」に注力する
「好きなこと」や「やりたいこと」が仕事であれば、前向きなパワーが出て、いつまでも楽しく続けられます。事業の方向性に迷ったときは、その軸がぶれないようにすることが大切です。

起業では「事業に回す資金はここまで」と決める

 起業したもののお金に困って、「自分がやりたくない仕事」を引き受けた結果、苦労することになっては元も子もありません。最悪の事態を想定し、「事業が失敗したとしても、これまでの蓄えと退職金・公的年金で生活していくことができるかどうか」ということだけは、必ず確認しておきましょう。借金をしなければならないような事業は、シニア起業としてはリスクが高過ぎるのでおすすめできません。

 また、自営業になると、これまで会社に任せていた申告や納税を自分で行う必要があります。「税に関する基礎知識」も、あらかじめ勉強しておくようにしましょう。