アパレル業界の温暖化対策のトレンドに不参加の日本
根本 もうひとつのわかりやすい例として、衣類もあります。日本では毎年100万トンの衣料品が捨てられていて、枚数にすると33億着にもなります。
―― すごい数字ですね。もったいない。
根本 古着にしてリサイクルするというのも大事ですが、それよりも生産調整を徹底するほうが、資源の無駄遣い、CO2排出の点からも、よほど効果が高いはずです。
今、アパレル業界のグローバルな流れは、CO2削減への積極的な取り組みです。2018年にポーランドで開催されたCOP24(国際気候変動枠組み条約締約国会議)では、アディダス、バーバリー、H&M、GAP、ZARAなどの大手ブランドや業界団体が「ファッション産業気候変動行動憲章」を発表。2025年までにカーボンニュートラル(※3)を目指すことを宣言しました。残念なことに、この憲章に日本のアパレル企業が1社も参加していません。
―― それはとても残念ですね。グローバル展開をしている日本のアパレル企業もありますが、世界の流れについていけていないということでしょうか。企業人としては、グローバルな動きもスピーディにキャッチしながら、いかに企業価値を高めてブランド化していくかは、重要なテーマとなりますね。
東京オリンピック・パラリンピックもSDGsのきっかけに
根本 日本では来年、東京オリンピック・パラリンピックを控えていますが、環境とスポーツという視点もあります。
オリンピックのような大規模な国際スポーツ大会は、膨大なエネルギーや資源を消費します。一方で、アスリートは気候変動の変化を敏感に感じ取り、危機感を募らせています。
―― オリンピック・パラリンピックを1年後に控えて、関連する企業が多岐にわたります。企業として何ができるか、考える大きなチャンスとも言えますね。
根本 SDGsは17の目標がバラバラにあるのではなく、すべてがつながっています。みなさんは、ひとりの生活者として、そしてビジネスパーソンとして、ぜひSDGsに積極的に関わってください。女性には非常に大きなパワーと影響力があります。和平交渉に女性の代表者が参加すると平和が長く維持できるという統計もあるんですよ。
―― そうなんですか! SDGsが日本社会で盛り上がる中、女性の感性や意見こそが世界を変える力になると伺って、とても勇気づけられました。ぜひ、企業のSDGsの取り組みにも、女性の力を発揮していきたいですね。
文/工藤千秋 撮影/馬場わかな
国連広報センター所長