商品やサービスの価値を売るために必要な手法「マーケティング」。その理論を知っておくと、ビジネスパーソンにとってさまざまなメリットがあると話すのは、マーケティング・コンサルタントの森行生さん。最終回となる今回は、ブランディングについて学びます。

(1)デキる人の思考・行動はマーケティング理論に沿っている
(2)「あえて時流に乗らない」でビジネスチャンスを増やす
(3)知っておくと転職の面接にも強くなれる「DCCM理論」 ←今回はココ

ブランドは高級品とは限らない

編集部(以下、略) 「『あえて時流に乗らない』でビジネスチャンスを増やす」の記事では、イノベーター理論を活用しつつ、あえて大きな時流に乗らないという戦略を学びました。今回は商品に焦点を当て、差別性と優位性のバランスが取れたコンセプトを考えるということでしたが、いわゆるブランディングをするということでしょうか。

森行生さん(以下、森) そうですね。ブランド化するためには、差別性と優位性はなくてはならないものです。さて、ここで質問です。「ブランド」の定義って何だと思いますか?

―― 「ブランド」といえば、銀座の路面店で売られているような高級なバッグや宝飾品などが思い浮かびますね……。

 マーケティングで語られる「ブランド」は、必ずしも高級品とは限りません。例えば「リポビタンD」も「ダイソー」もブランドです。

 マーケティングにおけるブランドとは「意味が広く知られていて、目印がついたもの」を指します。目印は、商品名や特徴的なデザインです。つまり、「リポビタンD」という目印を見れば「飲めば元気になる」という意味が思い出され、「ダイソー」は「100円で日用雑貨や食品が買える」と想起させます。このように「目印」と「意味」のセットが広く知られているので、ブランドとなるわけです。

 逆に言うと、「目印」と「意味」がつながっていないと私たちは困ることになります。例えば、ある日、お気に入りの耳かきが折れて使えなくなってしまったとします。でも、この耳かきをどこで買ったのか覚えていません。ましてや、耳かきに「ブランド名」も「会社名」も書かれていません。

 そうなると、同じ使い心地の耳かきを一から探さなければいけなくなります。このケースでは「意味」つまり「気持ちが良い耳かき」ははっきりしていますが、「目印」つまり、ブランド名がないために、似たような気持ち良さの耳かきを探すために無駄な時間を使わざるを得なくなります。

 でも、もし、ユニクロの耳かきだと分かっていたら、ユニクロの店に行けば同じものを手に入れることができるのです。無駄な時間はありません。ブランドには、「期待値」を得るための無駄な時間や手間を省くことができるというメリットがあるのです。

「意味」はあっても「目印」がない商品は、すぐに探し出すことができない
「意味」はあっても「目印」がない商品は、すぐに探し出すことができない

―― なるほど。ではそのようなブランドを作るにはどうすればいいのでしょうか?

 ブランドと呼ばれるようになるためには5つの条件があります。