商品やサービスの価値を売るために必要な手法「マーケティング」。その理論を知っておくと、ビジネスパーソンにとってさまざまなメリットがあると話すのは、マーケティング・コンサルタントの森行生さん。今回は、マーケティングの基本である「イノベーター理論」と市場への参入の仕方について学びます。

(1)デキる人の思考・行動はマーケティング理論に沿っている
(2)「あえて時流に乗らない」でビジネスチャンスを増やす ←今回はココ
(3)ヒット作の差別化のポイントとブランドの作り方

最初から一般大衆をターゲットにすると失敗する

編集部(以下、略) 「デキる人の思考・行動はマーケティング理論に沿っている」の記事では、マーケティングの要である「生活者を理解すること」、思い込みを捨てて観察力を磨くことの大切さを学びました。ヒット商品は最初から一般大衆が買う、というのも思い込みだということでしたが、そもそもヒット商品というのは、幅広く多くの人に「売れている=好かれている」もののことですよね。

森行生さん(以下、森) 最終的には、多くの人に好かれるのですが、そこに至るまでには段階があるというのがマーケティングの考え方です。最初は約10%の特定層が手に取り、そこから徐々に広がっていき、一般大衆に広がっていくことでヒット商品は生まれます。すなわち、最初から一般大衆をターゲットにして商品開発をしてしまうと、失敗するのです。

―― まず手に取る「約10%の特定層」とはどのような人のことを指すのでしょうか。

 ちょっと先進的で、知識が豊富な「イノベーター」と呼ばれる人たちです。彼ら彼女らは、自分が気に入った商品を無料で周囲に広めてくれます。生活者は、イノベーター(人口の約10%)、アーリーアダプター(人口の約25%)、フォロワー(人口の約65%)の3つのグループに分けられます。イノベーターに売れたら、次はアーリーアダプターに、そして最後にフォロワー(一般大衆)まで達します。つまりこのイノベーターをターゲットにすれば、効率よくヒット商品を作ることができるのです。これを「イノベーター理論」と呼びます。

「イノベーターは『ヒットへの導火線』ともいうべき存在です」
「イノベーターは『ヒットへの導火線』ともいうべき存在です」