食べ物で健康な心と体を作る予防内科医の関由佳さん。医師でありながらNYで栄養と料理を学び、ミシュラン星付きレストランでも働いた異色の経歴の持ち主です。無農薬の野菜作りにも挑戦中の関さんが、美しく健康になる食べ方を、オリジナルレシピとともにご紹介します。今回のテーマは「手前味噌」です。

 朝晩の気温もぐっと下がり、今年もまた味噌作りの季節がやってきました。おうち時間が増えそうなこの冬は味噌作りにチャレンジしてみませんか?

 日本には昔から味噌やしょうゆ、日本酒など、冬の寒さを利用して仕込む発酵食品がたくさんあります。冬に仕込むとおいしく仕上がるのは、冬は気温が低いため雑菌や有害なカビなどが生えにくいから。ゆっくり時間をかけて発酵・熟成させることができてうま味を十分に引き出せます。秋に収穫した新鮮な米や大豆などの材料を使って仕込むことができるのもこの時期ならでは。

 残念ながらスーパーで売られている味噌のほとんどが加温発酵。人工的に熱を加えて発酵速度を速めています。熱を加えない天然醸造でつくる手作り味噌の半分に満たない短い発酵期間で出荷されるため、コクや風味に物足りなさを感じます。また、市販の製品は品質を安定させるためにアルコールなどを加えて発酵を弱めているため、手作り味噌ほど発酵パワーがありません。

左から仕込んだ直後、6カ月後、1年経過したもの。ガラス瓶に入れると発酵の進み具合がわかります
左から仕込んだ直後、6カ月後、1年経過したもの。ガラス瓶に入れると発酵の進み具合がわかります

ゆっくり発酵させると体にいい成分も増える

 手作りの良いところは初めてでも天然醸造でおいしく仕上がることと、ゆっくり発酵させることでメラノイジンなどの体にいい成分が豊富につくられること。自分で仕込んだ味噌を毎日食べると、善玉菌が増えて腸内環境が整い、食べ物の吸収が良くなったり、免疫力を高めたりすることにつながります。

 さらに、とことん材料にこだわることができるのも手作りのメリット。私は毎年、オーガニックのひよこ豆と無農薬の米麹(こうじ)、天日塩で味噌を仕込んでいます。今は、昨年仕込んだひよこ豆の味噌がおいしく仕上がり、毎日の料理に使っています。

 ひよこ豆の味噌は赤味噌と白味噌の良いところを組み合わせたような、ちょうど良い甘さとまろやかさがあります。シチューやパスタなどの西洋料理にも合わせやすく、使い勝手のいい便利な調味料です。

 味噌を作ったことがない方は「手作りなんて難しい」と思われるかもしれません。私もそうでした。でも、作ってみるとこれが意外に簡単、シンプル!