食べ物で健康な心と体をつくる予防内科医の関由佳さん。医師でありながらNYで栄養と料理を学び、ミシュラン星付きレストランでも働いた異色の経歴の持ち主です。無農薬の野菜作りにも挑戦中の関さんが、美しく健康になる食べ方を、オリジナルレシピとともにご紹介します。今回のテーマは「やさい麹(こうじ)」です。

発酵調味料の仕込みに適した季節

 すっかり秋も深まり、気温もグッと下がってきましたね。今年も「麹(こうじ)」を使って味噌などの発酵調味料を仕込む季節になりました。今回は麹と野菜のパワーを掛け合わせた「やさい麹」の作り方を紹介します。私が考案したやさい麹は、身近な野菜と麹で簡単に作れる発酵調味料です。

 私はニューヨークに住んでいたときに初めて味噌を手作りし、それ以来、毎年自家製味噌を仕込み続け、今年で7年目になりました。昨年の冬には愛知県の麹専門店にインターンとして住み込みで働き、麹作りを学びました。麹を使った発酵調味料は今や私の食生活の基本となっています。

麹は「酵素の宝庫」、美容成分もたっぷり

 麹のパワーを知っていますか? 麹は、米や麦、大豆などに麹菌を付着させ、適度な温度や湿度において繁殖させたもの。味噌だけでなく、日本酒、しょうゆ、酢、みりんなどにも使われていて、私たちの生活に欠かせないものです。

日本の食文化に欠かせない麹。日本醸造学会は2006年、「古来大切に育み、使ってきた貴重な財産」として麹菌を「国菌」に認定しました
日本の食文化に欠かせない麹。日本醸造学会は2006年、「古来大切に育み、使ってきた貴重な財産」として麹菌を「国菌」に認定しました

 麹菌は発酵の過程で多くの酵素を生産するのが特徴です。酵素は生体内のさまざまな化学反応を引き起こす触媒になる大切なたんぱく質。「酵素の宝庫」といわれる麹には、アミラーゼやリパーゼ、プロテアーゼなどの消化酵素をはじめ、30種類以上もの酵素が含まれています。栄養素を分解して、消化・吸収を助け、腸内細菌を元気にしてくれるのです。

 酵素以外の代謝産物としてビタミンB群を産生します。ビタミンB群は疲労の回復や美肌の維持、活性酸素の除去などに必要な栄養素で健康や美容に欠かせない成分です。また、うま味成分のアミノ酸が豊富なので、麹を使った発酵調味料を使うだけで料理のおいしさや味の深みがグッと増します。