食べ物で健康な心と体をつくる予防内科医の関由佳さん。医師でありながらNYで栄養と料理を学び、ミシュラン星付きレストランでも働いた異色の経歴の持ち主です。無農薬の野菜作りにも挑戦中の関さんが、美しく健康になる食べ方を、オリジナルレシピとともにご紹介します。今回のテーマは「完全栄養食・味噌」です。

薬よりも食べ物で病気を治したい

 実は、私は医者になるか、シェフになるか迷ったことがあるくらい、料理が好きで医学部時代から料理や栄養について学んでいました。医者になって、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の患者さんを担当するようになると、まず患者さんたちから聞かれることは、「日々、何を食べたらいいのですか?」ということ。患者さんは薬だけでなく、「自分でできることはしたい」と思っているのです。

 しかしながら、医学部でビタミンやミネラルなどの栄養素と働きについて学ぶのはほんの数時間だけ。それらがどんな食材に含まれ、どのくらい食べればいいのかまでは教わりません。ましてや、食品の旬や調理法までアドバイスできるドクターはほとんどいないでしょう。

「医者で料理人なんてクレイジー!」

 薬を使った治療よりも、誰もが日々できる食療法や調理法に興味があった私は2013年、一念発起して料理人になると決意しました。

 ちょうど海外の栄養療法について学んでいたとき、1冊の本に出合い、オーガニックの食材のみを使い、栄養学をベースに健康志向の調理法を学べる学校がニューヨークにあることを知り、1年間留学することにしたのです。

 学校ではマクロビオティックやアーユルヴェーダ、ヴィーガンなど、さまざまな食事療法とそれに基づくレシピを学びます。毎日大好きな料理をして栄養も学べる最高の環境。1日10時間以上キッチンの中にいる生活でしたが、疲れ知らずで充実した日々でした。

卒業後はマンハッタンにある精進料理やヘルシーなフレンチレストラン、火を使わないローフードのお店など、食の最先端でインターンとして働きました
卒業後はマンハッタンにある精進料理やヘルシーなフレンチレストラン、火を使わないローフードのお店など、食の最先端でインターンとして働きました

 日本では「医者を辞めて料理人になりたい!」なんて言うと、「信じられない」「よくやるね」など、ネガティブな反応でしたが、ニューヨークでは、「医者でシェフなんてクレイジー(すごい)!」とみんな明るく受け入れてくれました。