国内外で約4000人のエンジニアが働く楽天の開発部門のトップとして、グローバルな組織運営と戦略づくりに携わる楽天副社長執行役員 CIO&CISO(最高情報責任者&最高情報セキュリティ責任者)の平井康文さん。プライベートでは長年アマチュアオーケストラでチェロを演奏するクラシック愛好家で、仕事で困難に向き合ったときは、世界的指揮者として活躍する小澤征爾のドキュメンタリーに勇気づけられてきたといいます。(下)は、国も文化も多様な人が集う組織運営とオーケストラの共通点についてのお話です。

(上)小澤征爾が向き合う問いはビジネスに通じる
(下)社会的感受性が組織の力を最大化する ←今回はココ

 今は2つのアマチュアオーケストラに所属してチェロを弾いています。それ以外にも頼まれて他の団体の演奏会にエキストラで参加することも。休日はほぼオケ一色で、演奏会が近くなったら平日の朝5時に起きて練習したり、夜帰宅してから弾いたり。こういう生活を許してくれる家族に感謝ですね。

 僕はマネジメントにおいて、オーケストラ型の組織が理想だと思っています。

最大限の力を発揮する組織モデルを研究

 シスコシステムズ日本法人の社長時代、パフォーマンス・エクセレンス(卓越した経営)を実践する企業を表彰する「日本経営品質賞」を目指し、最終的に受賞することができました。そのときに、ベストなパフォーマンスを発揮する組織モデルとはどんなものかをいろいろ研究したんです。

 当初、僕は「野球型からサッカー型の組織になるべきだ」と考えました。野球は先攻、後攻があって、守備についたら得点は入りません。攻撃のときも、今がチャンスだからといって打順は変えられない。これはある意味昔の封建的、官僚的な組織のモデルだと思います。

 対してサッカーは、広いピッチの中で11人の選手が自由に動いて、ボールを持ったら攻めるけれど、取られたらすぐ守備に転換する。時にはゴールキーパーだってシュートをしに行きます。そのリアルタイム性、ダイナミズムがいいと思って、野球型からサッカー型への組織変革ということを、いろんなところで講演したり、社内で訴えたりしました。

 でもあるとき、ピーター・ドラッカーの論文に出合って感銘を受けたんです。彼は「オーケストラが21世紀の情報化社会の理想的組織モデルである」と言っています。

「チェロを選んだのは、ヴァイオリンは小さい頃から習っている人に絶対勝てないけれど、チェロは遅くに始めた人でもプロになっているから頑張れるのではという打算的な理由からです。音色に引かれたとか言えれば格好いいんですけどね(笑)」
「チェロを選んだのは、ヴァイオリンは小さい頃から習っている人に絶対勝てないけれど、チェロは遅くに始めた人でもプロになっているから頑張れるのではという打算的な理由からです。音色に引かれたとか言えれば格好いいんですけどね(笑)」