ハワイで小澤さんに話しかけた息子 返ってきた言葉は…

 ニューヨークに赴任していた1995年と96年、家族で夏にタングルウッド音楽祭のコンサートを聴きに行ったんですね。そのとき僕が小澤さんにサインをもらっていたら、当時3歳くらいだった息子も小澤さんと握手して一緒に写真を撮りました。

 その後息子はクラシック音楽には特に興味を持たず育ったのですが、ずいぶん前に正月の家族旅行でハワイに行ったら、小澤さんもご家族でいらっしゃっていたんですよ。そうしたら大学生になった息子が、デパートで見かけた小澤さんのところへ近づいて、「小澤さん、ご無沙汰しています」って言ったんです(笑)。息子からしたら、子どものときに会っているから確かに間違ってはいない。で、それに対して小澤さんはなんて返してくれたと思いますか? 「おう、ご無沙汰! 元気か?」って。本当に人を引きつける、垣根のない人なんです。

 世界的指揮者として近寄りがたい雰囲気を出していても不思議ではないのに、そういうことが全くない。だからこそ彼はみんなに好かれるのだと思うし、そういうパーソナル・インティマシーは、ビジネスの世界でグローバルに仕事をする上でも、重要な要素ではないかと思っています。

95年のタングルウッド音楽祭では、小澤が指揮するマーラーの交響曲第2番「復活」を生で聴くことができた。そのときに持参したスコア(総譜。すべてのパートの音を記した楽譜のこと)。表紙にサインをしてもらった
95年のタングルウッド音楽祭では、小澤が指揮するマーラーの交響曲第2番「復活」を生で聴くことができた。そのときに持参したスコア(総譜。すべてのパートの音を記した楽譜のこと)。表紙にサインをしてもらった

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取材・文/谷口絵美(日経ARIA編集部) 写真/鈴木愛子

平井康文(ひらい やすふみ)
楽天副社長執行役員 CIO & CISO
平井康文(ひらい やすふみ) 九州大学理学部数学科卒業後、1983年に日本IBMに入社。米国IBMヴァイスプレジデント、マイクロソフト執行役専務、シスコシステムズ代表執行役員社長などを歴任。2015年2月楽天に入社。現在、楽天副社長執行役員 グループエグゼクティブヴァイスプレジデント CIO & CISO、楽天コミュニケーションズ代表取締役会長兼社長、楽天モバイル取締役副会長を兼任。また社外では、新経済連盟顧問、経済同友会幹事、東京フィルハーモニー交響楽団理事などを務める。