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人生はいつもクラシック

松本志のぶ 自信のない私をラヴェルのボレロが励ました

(上)将来の夢はあるけれど、人前が苦手で自分に自信が持てなかった10代の頃


各界で活躍する方々が、自身にとって忘れられないクラシック音楽の一曲と共に人生を語ります。今回登場するのは、フリーアナウンサーの松本志のぶさん。日本テレビのアナウンサー時代は、確かなアナウンススキルで報道からバラエティーまで幅広く活躍しましたが、実は子どもの頃から人前で話すことが大の苦手だったそう。やってみたいことはあるけれど、自分に自信がない…。そんな思春期の松本さんを勇気づけたのは、あのクラシックの名曲でした。

(上)松本志のぶ 自信のない私をラヴェルのボレロが励ました ←今回はココ
(下)スポーツ実況で大失敗、救ってくれた徳光和夫さんの一言

 クラシック音楽といえば子どもの頃、父がよく1人で居間にこもってレコードを聴いていたことを思い出します。夕食時になっても姿が見えなくて、居間のドアを開けると、ベートーヴェンとかを大音量でかけているんです。当時は「お父さん、また聴いているなあ」と思うだけで、特に興味を持つことはありませんでした。

 私自身にとって忘れられないクラシックとの出合いは高校2年生のとき、1年間留学していた英国で訪れました。

延々と繰り返される同じリズムとメロディーに衝撃

 留学先はロンドン郊外にある学校で、敷地内の寮で生活をしていたのですが、そこの寮母さんが「勉強はもちろん大事だけれど、ここでしかできない体験をしたほうがいい」と、時々留学生たちをいろんなところに連れ出してくれました。例えば、後に離婚されますが、エリザベス女王の次男、アンドルー王子とセーラ・ファーガソンさんのロイヤルウエディング。「めったに見られるものじゃないから学校を休んで行きましょう」と(笑)、パレードの場所取りをするために寮を早朝に出発。故ダイアナ妃やチャールズ皇太子、エリザベス女王が目の前を馬車で行く姿を見て感激しました。

 あとは、さまざまな芸術体験です。英国ロイヤル・バレエ団の公演やクラシックのコンサートにも何度か行きました。

 人に案内されるままあちこち動いていたので、詳しいことは覚えていないのですが、あのときはテムズ川沿いの夜景が見えたので、たぶんロンドンのロイヤル・フェスティバル・ホールだったように思います。そこでオーケストラの演奏を聴いて衝撃を受けたのが、ラヴェルの「ボレロ」でした。

 ボレロはとても単調に進んでいく曲ですが、延々と繰り返される同じリズムとメロディーは、一度聴いたらきっと誰の頭にも残るだろうと思うほど印象的です。聞こえるか聞こえないかくらいの小さな音でリズムを刻むスネアドラムにのせて、まずフルートの演奏でメロディーが始まります。クラリネット、ファゴットと、メロディーを担当する楽器が次々に変わりながら、だんだんと音量や音の厚みが増していく。その響きが、少しずつ積み重なるように心の中に入ってきました。やがて大音量でクライマックスを迎え、演奏が終わると会場からは割れんばかりの拍手。打楽器奏者の方がステージの中央に悠然と出てきて、喝采を一身に浴びていました。

 15分ほどの曲の間中、スネアドラムは最初から最後まで少しも乱れることなく、同じリズムを刻み続けます。そのインパクトは強烈でした。それと同時に、同じことの積み重ねで、聴く人を熱狂させる大きなうねりをつくっていくボレロという曲が、当時の私を勇気づけてくれたのです。

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