各界で活躍する方々が、自身にとって忘れられないクラシック音楽の一曲と共に人生を語ります。今回登場するのは、スマートフォンで管理できる収納サービス「サマリーポケット」を運営するサマリーの代表取締役、山本憲資さん。年間50本はコンサートに足を運ぶという山本さんが本格的にクラシック好きになったのは30歳前後の頃。コンサートへ行く前にあることを始めたのがきっかけでした。そして、数多くの演奏を聴いているうちに強く引かれるようになったという、この世界の「解像度の高さ」とは?

(上)小澤征爾がサプライズ指揮 心に刻まれたベートーヴェン ←今回はココ
(下)心を動かすものは、合格点の先にある

 先週末は鹿児島、今度の週末は関西から岡山。コンサートや展覧会など、「これは絶対に聴きたい、見たい」と思うものがあれば、割とどこへでも出かけます。新型コロナウイルス禍の前には海外へも。小澤征爾さんが指揮するベルリン・フィルの本拠地での公演をどうしても聴きたくて、金曜だけ会社を休んで木曜の夜発、日曜の夜戻りという弾丸スケジュールでベルリンまで行ったこともあります。

 今は海外への旅行はまだハードルがありますが、リモートワークが一般的になったことで、移動しながら働きやすくはなりましたよね。スマートフォンの電波の届かないところには行かないし、どこにいても仕事のメールやSlackのレスポンスはめちゃくちゃ速いですよ。オンとオフをしっかりと区切らず、頭をさっと切り替え続けるのは昔から得意かもしれません。

「予習」して行くと、コンサートがどんどん楽しくなった

 クラシック音楽が本格的に好きになったのは30代に入ってからです。それまでも時々聴くことはありましたが、クラシックのトレンド全体を理解して網羅的に理解を深めるというよりは、カルチャー誌の編集者をしたこともあり、いろいろな分野にアンテナを張る一環として、話題の演奏家や旬の指揮者のコンサートを何となくチェックする感じでした。

 クラシックのコンサートって基本的に演目が前もって発表されているのですが、いつの間にか予習をしてからコンサートに行くのが普通になってきました。僕は音楽の素養はないし、楽器も弾けないただの愛好家ですが、とにかく耳で曲を覚えて、「聴いたことがある曲」の状態にして出かけるんです。そうすると、コンサートに行くのがどんどん楽しくなっていきました。ポップスでも、コンサートに行ったときに知っている曲がかかったほうが楽しいのに近しい部分もあるのかもしれません。

 そうこうしているうちに、気づけば年間50回程度はコンサートに足を運ぶくらい、クラシック音楽にはまっていきました。