長期運用のパイオニアとして事業に没頭する生活を送り、時折心が欲するクラシック音楽を夜通し聴くことで、思考がいっそうさえわたるというさわかみホールディングス代表取締役の澤上篤人さん。近年は投資・運用だけでなく、さまざまな事業を展開しています。その1つが、オペラの主催公演を行う財団の設立。澤上さんがオペラをやる理由はクラシックファンだから、ではありません。すべての事業を貫いているのは、起業当初から抱き続けてきた、事業家としてのある信念でした。

(上)クラシックを聴いた翌日は仕事のエンジン加速
(下)「世の中のためにお金をぜいたくに使う」 ←今回はココ

この記事の前に読みたい
澤上篤人 クラシックを聴いた翌日は仕事のエンジン加速


 私は1996年に「さわかみ投資顧問(現・さわかみ投信)」を設立し、99年に「さわかみファンド」を設定して、ずっと長期投資をやってきました。投資と言っても、私たちの目的は金もうけではありません。長期投資によって、いい世の中をつくる方向に一般の生活者の皆さんをご案内すること、それが大前提にあります。

 私たちはもうけを出そうと思って投資先を選ぶのではなく、「応援したい会社」を選びます。世の中のために大事だから、もっと頑張ってほしい、もっと大きくなってほしいと思う会社。応援する以上は、みんなが株を売りに出している、つまり株価が暴落しているときに買ったほうが応援のしがいがありますよね。で、ちょっと回復してくると「にわか応援」の人が出てくるから、彼らに応援を任せて売ります。でも、にわかの人たちというのはすぐにまた売りに出すもの。そうしたら、「私たちが応援しなきゃ」と思ってまた買う。こういうリズムが長期投資には大事なんです。

「世の中のためにお金をぜいたくに使う」と決めていた

 起業して最初の9年間は大赤字で、個人借金が10億円を超えていました。元利払いだけで毎月160万円だから、そりゃあ大変です。でも10年目に会社が黒字になった瞬間に財団法人を作りました。これは最初から決めていたことです。

 私も社員も自分がぜいたくするをことには興味がありません。でも、世の中にお金を使うぜいたくはとことんやろうじゃないかと考えています。その2つの大きな柱が、オペラと寄付の文化を広めることです。

「志のある企業を応援しよう、いい社会をつくって、子どもたちに残していこう。こういう青くさい話は、男性よりも女性のほうが刺さると思うんですよ。男はダメだよ、頭で考えて、つい『でも』『でも』って言い出すからね(笑)」
「志のある企業を応援しよう、いい社会をつくって、子どもたちに残していこう。こういう青くさい話は、男性よりも女性のほうが刺さると思うんですよ。男はダメだよ、頭で考えて、つい『でも』『でも』って言い出すからね(笑)」