そこで、既存のオペラ業界を無視してとことん「芸術」をやろうと思いました。エージェントなどは一切使わず、オペラの本場イタリアへ直接行ってオーディションを開催。そうしたら、「変な奴がオペラの本場イタリアへ乗り込んで来た、何事だ!」と大ブーイングです。でもその横で、歌手たちはみんな参加したいと手を挙げてきました。現状ではトップのごく一握りの歌手に仕事が集中して、実力がある多くの歌手たちに出番がないからです。

 そうして歌手や演出家をオーディションで集めて始めたのが「ジャパン・オペラ・フェスティヴァル」。2019年で6年目です。せっかくなら今まで誰もやっていないことをやろうと、名古屋城や京都国立博物館など、歴史的建造物を借景にした野外ステージで上演しています。

(写真上)2018年のジャパン・オペラ・フェスティヴァルの様子。名古屋城天守閣前の特設ステージでプッチーニの「トスカ」を上演した。「華やかなオペラが繰り広げられても、終われば翌日そこには何もありません。まるで夢まぼろしのよう。モノはなくなるけど、心の中には感動が永久に残ります」と澤上さん(写真下)2019年は同じ会場で、プッチーニの「蝶々夫人」を上演。出演者によるガラコンサート(特別公演)も行われる
(写真上)2018年のジャパン・オペラ・フェスティヴァルの様子。名古屋城天守閣前の特設ステージでプッチーニの「トスカ」を上演した。「華やかなオペラが繰り広げられても、終われば翌日そこには何もありません。まるで夢まぼろしのよう。モノはなくなるけど、心の中には感動が永久に残ります」と澤上さん(写真下)2019年は同じ会場で、プッチーニの「蝶々夫人」を上演。出演者によるガラコンサート(特別公演)も行われる

30代で出会った、海外の長期運用のすご腕が指針に

 世の中のためにお金を回したいという思いは30代半ばくらいからありました。それはスイスのキャピタルで仕事をしたり、ピクテ銀行の日本代表をやったりする中で、長期運用のビジネスで活躍する世界のすごい人たちに出会うことができた影響が大きいですね。力があるからいくらでも稼げるけれど、ぜいたくはしないし、みんな真面目。猛烈に仕事をして遊ぶ暇なんてないけれど、ビジネスそのものが楽しくて仕方がないんです。そういう人たちを見て、かっこいいな、自分もそうなりたいなと思いました。

 私が会社を設立した当時、長期投資は日本ではほとんど見向きもされませんでした。でも、彼らを見てきたから絶対の自信がある。いい会社の株を安いときに買い、他に余計なことは一切しない。世の中をよくしたいという信念をもって、マーケットとは付かず離れずを貫く。うちの哲学や方向性を示して、それを分かる人に集まってもらえればいいから、さわかみファンドは初めから直販にして、営業は一切しません。