長期投資は時間さえかければお金が増えていきます。「このくらい財産があれば安心」という額は人によって違うけれど、そこまで増やせたら当然保険は解約していいし、年金に頼らなくてもいい。経済的に自立した状態になるわけです。これをファイナンシャルインディペンデンスと言います。

 じゃあ、ファイナンシャルインディペンデンスを実現した後はどうするか。私たちは、必要な分を超えて増えるお金は、世の中のためにカッコよく使おうぜ、ということを前々から提案しています。

心のぜいたくはオペラで、気持ちの満足は寄付で

 日本人はとにかく真面目に働き、必要なものだけを買って余ったお金は貯金するということをずっとやってきました。発展段階の経済ではそれでよかったのですが、成熟経済になると必要なものはすでに手に入って、もう買うものがなくなり、ためこむほうにお金が向かってしまって経済が動かなくなる。だから「あえて」お金を使わないといけないわけです。でも、日本人はお金の使い方を知りません。

 よく「モノ」から「コト」へといわれますが、あれは簡単に言うと、モノは満たされたから、心のぜいたくと気持ちの満足にお金を使わないといけないよね、ということ。具体的に言うと、文化、教育、芸術、技術、寄付、NPO、ボランティア。その使い方のモデルをお見せしようと思って、オペラと寄付の財団をやっています。心のぜいたくはオペラで、気持ちの満足は寄付で得ましょうと。

 私はクラシックは大好きだけど、オペラには全然興味がありませんでした。でも、文化に対する一番ぜいたくなお金の使い方は何かなと考えたときに、オペラが浮かんだんです。

 いろいろ調べていくと、世界中でオペラに商業主義がまん延して、興行的成功ばかりを追い求め過ぎていることが分かりました。エージェントやプロモーターが高いチケット代を設定し、もうけるのは彼らばかりで歌手はみんなしんどい生活をしている。聴衆のほうも、チケットが高いから若い人は聴かないし、年寄りが楽しむだけでは先細りです。