もともとクラシック音楽は苦手だったのに、大学時代に姉に誘われて行った演奏会でメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を聴いて、「クラシックも悪くないな」と思ったという、六花亭亭主の小田豊さん。後に札幌に本格的な音楽ホールを造ってコンサートを企画するなど、ひときわ文化事業に熱心な経営者となりました。全国区の人気が出ても北海道以外に出店せず、拡大路線とは別の道を歩んできた六花亭。小田さんが理想とする菓子作りは、クラシック音楽の魅力に通じるものがあるといいます。

(上)六花亭・小田豊 道内に4つも音楽ホールを造ったワケ
(下)流行は追わず 六花亭が大切にするのは「間口より深さ」 ←今回はココ

 今年の3月、オーストリア・ウィーンの楽友協会で、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会を聴いてきました。僕は年に5、6回は海外へ目的のない旅に出て、お菓子のヒントなどいろんなことを拾ってくるんだけど、純粋にコンサートを目的に海外に行ったのは初めてじゃないかな。六花亭の音楽ホールの企画をお願いしている、音響ディレクターの櫻井卓さんに誘ってもらったのがきっかけです。

 楽友協会は毎年元日にNHKで生中継される、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートでも知られる場所。その昔、両親がニューイヤー・コンサートに出掛けてテレビに映ったことがあったんですよ。そんなこともあって、いつか行ってみたいと思っていました。

 コンサートは何ていうかなあ、僕のボキャブラリーでは表現できないくらい、別世界でした。ウィーン・フィルが奏でる音楽も、「黄金のホール」と呼ばれる大ホールのきらびやかな空間も。

新しいというのは、古くならないこと

 僕はファッション(流行)は全然追いません。お菓子でも建物でも、つくり上げたものが歳月を経て「時代」を感じさせるようになっていく様子が好きです。

 新しいというのは、古くならないことだと思うんです。実はこれは、大佛次郎の「宗方姉妹」という小説に出てくる一節。着るものでも何でも、次から次へと新しいものを追いかける妹に対し、姉が「新しいって、古くならないことよ」という言葉をかけます。やっぱりそうだよな、と共感します。

 古くならないもの、長く支持されるものを作りたいというのが、僕の基本姿勢。そういう意味では、クラシック音楽も古くならないし、趣味でやっているお茶の世界も同じです。

壁に貼ってあるのは、今年3月に聴きに行ったウィーン・フィルの演奏会のポスター。「事前に頼んでおくとポスターを分けてくれるそうで、友人が手配してくれました。『AUSVERKAUFT(売り切れ)』のシールは町中のポスターに貼ってあったもので、はがれかけていたからコンサート後にいただきました(笑)」
壁に貼ってあるのは、今年3月に聴きに行ったウィーン・フィルの演奏会のポスター。「事前に頼んでおくとポスターを分けてくれるそうで、友人が手配してくれました。『AUSVERKAUFT(売り切れ)』のシールは町中のポスターに貼ってあったもので、はがれかけていたからコンサート後にいただきました(笑)」