会社として大切にするのは間口よりも深さ

 本店があるここ帯広は駅前がシャッター通りになってしまって、昼間はあまり人通りがありません。それでも、うちの店はいつもお客さんでいっぱいです。これだけ多くの人が六花亭を目指してきてくれるということは本当にありがたいし、何よりの喜びです。喫茶室なんて、毎日来ている人もいるんじゃないかな。

 4階のはまなしホールでは2カ月に1回くらいコンサートをやっているんですが、ついこの間はサクソフォンの四重奏団が出演しました。誰もが知っている有名な曲をやるわけでもないのに、大勢のお客さんが来るんですよ。常連で顔見知りのおじいさん、おばあさんも多い。たぶん、「六花亭が企画するものだったら行ってみようかな」という安心感があるんじゃないでしょうか。

 お菓子はもちろんのこと、コンサートにしても喫茶室にしても、売り上げよりも前に、お客さんが来てくれることをする。間口よりも深さを大切にして、拡大せずに持続していく会社のあり方をずっと追求してきたつもりです。そういうやり方を維持するのに必死ですが、たぶん長い目で見たらどこかで帳尻が合うはずなんです。

 「おいしい」「まずい」という物差しの他に、その周りにある空気みたいなものが六花亭を支えてくれるんじゃないかなと思っています。

小田さんの一曲「メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲ホ短調」 ここで聴けます
【演奏会】
◆MDRライプツィヒ放送交響楽団
2019年10月30日(水)19時、サントリーホール(東京)
指揮:クリスチャン・ヤルヴィ
ヴァイオリン独奏:アン・アキコ・マイヤース
曲目:
J.S.バッハ/メンデルスゾーン編曲:管弦楽組曲第3番ニ長調より「序曲」
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調
ブラームス:交響曲第1番ハ短調
料金:S1万4000円~P6000円
問い合わせ:03-3544-4577

◆名古屋フィルハーモニー交響楽団 第473回定期演奏会
<破天荒の傑作/ベルリオーズ没後150周年記念>
2019年11月15日(金)18時45分、16日(土)16時、愛知県芸術劇場コンサートホール(愛知)
指揮:小泉和裕
ヴァイオリン独奏:オーガスティン・ハーデリッヒ
曲目:
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調
ベルリオーズ:幻想交響曲
料金:S7200円~C4100円(16日のB、C席は残席僅少)
問い合わせ:052-339-5666

◆名古屋フィルハーモニー交響楽団 東京特別公演
2019年11月19日(火)19時、東京オペラシティ コンサートホール(東京)
出演者および曲目は上記定期演奏会と同じ
料金:S6200円~C3100円
問い合わせ:052-339-5666

※チケット販売状況は2019年8月25日時点の内容を掲載しています。最新情報は各問い合わせ先へご確認ください。

取材・文/谷口絵美(日経ARIA編集部) 写真/東藤亮佑

小田豊(おだ ゆたか)
六花亭亭主、六花亭食文化研究所所長
小田豊(おだ ゆたか) 1947年北海道生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、72年に帯広千秋庵製菓(現・六花亭製菓)に入社。取締役副社長を経て、95年に代表取締役社長に就任。2015年、第13回渋沢栄一賞受賞。16年に代表取締役社長を退任し、六花亭食文化研究所所長に就任。同時に六花亭の「亭主」を名乗る。17年、第1回井上靖記念文化賞を受賞。