最近、仕事をしながらクラシックのCDをかけっぱなしにするようになったんですが、以前は眠たくなると思っていたマーラーの交響曲が、「あれ、これいいじゃん」って思うようになった。年齢を重ねたことで、同じ曲でもそれまでと違うものに感じられることがあるんですよね。

 お菓子にもそういうところはありますよ。例えば今年、かりんとうの新商品を作りました。かりんとう自体は昔からあるもので、「今さらかりんとう?」っていう話ですよね。でも、「僕が作るとこういうかりんとうになりますよ」というものができました。味はかりんとうだけど、中が空洞でね、すごく軽いんです。こういう食感ってないでしょ? と。

 東京の百貨店などに並んでいるお菓子を見ると、ネーミングや包装紙で着飾って、本質よりも見せ方や情報などにあまりにもうつつを抜かしているな、と感じることがあります。そうすると、「なんだよ、食いものはファッションじゃねえよ!」と思ってしまうんです。

(写真上)最近はピアノ曲をBGMに流しながら仕事をすることが多いそう。こちらはハンガリー出身のピアニスト、アンドラーシュ・シフのCD
(写真上)最近はピアノ曲をBGMに流しながら仕事をすることが多いそう。こちらはハンガリー出身のピアニスト、アンドラーシュ・シフのCD
(写真下)帯広本店のはまなしホールの壁には、これまで出演したアーティストのサインを刻んだ銅板が並ぶ

売り上げがずっと右肩上がりはあり得ない

 六花亭が北海道以外に出店しないのは、工場が帯広にしかないのに、そんな遠くまで商品を持っていくのはどうなのか、と思うからです。

 売り上げがずっと右肩上がりなんていうことはあり得ないとずっと思っていました。人口は減る、年寄りの胃袋は小さくなる。そうした中で、自分のところだけたくさんもうけるなんていうわけにはいかないでしょう。実際、今になってみればこれだけ人手不足の時代がやってきて、「ほら、やっぱりね」と。