喫茶室でサロンコンサートを企画、評判に

 大学を卒業して実家の帯広千秋庵製菓(後の六花亭製菓)に入社し、創業50年を迎える1982年に、帯広本店2階の喫茶室で記念のサロンコンサートを開くことになりました。当時副社長だった僕は、東京から有名なオーケストラを呼んで一晩だけのイベントをやるくらいなら、同じ予算で1年を通してできるような内容にしたらどう? と提案しました。一度きりでおしまいではなく、続くものにしたいと思ったんです。それで室内楽のコンサートを開くことになり、久保さんにも出演してもらいました。

 「お菓子とお茶と音楽と」というコンセプトで、名付けて「デセールコンサート」。デセールはフランス語でデザートの意味です。最初は1年でやめるつもりでしたが、これがまあ評判がよくて。早朝から寒空の下で、お客さんがチケットを買うために並んでくれるようになって、やめるにやめられなくなりました。初期に出演してもらった札幌交響楽団のメンバーの中に中央(東京)に人脈のある人がいて、「次はこの人」「その次はこの人」と、第一線の演奏家を連れて来てくれました。

 僕はみんなに喜んでもらうことが好きなんです。それでせっかくならと、仲間たちと「十勝ひろびろ音楽祭」という音楽イベントを始めました。十勝にコンサートホールはないので、建物のロビーなどが演奏会場。世界的なチェロ奏者のミッシャ・マイスキーやソプラノ歌手の中丸三千繪も来てくれました。

 イベントが終わってからは直会(なおらい)と称してワイワイおしゃべりする。それがたまらなく楽しくてね。これは20年くらい続いたのかな。最終的には地元のクラシックファンの広がりに限界が見えてきて、いったんおしまいにしようということになりました。

 それでもしばらくすると、また「何かやりたい」とむずむずとしてくるわけです(笑)。今度はどこかにちゃんといいホールを造らないといけないな、という思いがありました。そんなときに、札幌市の真駒内というところに六花亭の店舗を造るチャンスがやってきた。そこで、今度は先に音楽ホールを造ろうと決めました。