NTTデータ北陸とNTTデータ信越の社長を兼務する池田佳子さんは、新卒入社のNTT時代からほぼ法務一筋。NTTデータに移籍後、40代で広報部長という思いがけない辞令を受け、未知の仕事を手掛ける中でマネジメントにおける新たな視点を得たといいます。グループ内の地域会社社長を務めることになった今、過去の経験がすべて生かされていると話す池田さん。キャリアに前向きでアグレッシブだったゆえに味わった挫折とは?

(上)法務一筋から一転 未知のコンサート事業で開けた新世界
(下)「やり過ぎると人はついてこない」苦い経験、今も胸に ←今回はココ

コンサートにオペラに能 金沢は多様な芸術が息づく街

 今、私はNTTデータ北陸の社長として金沢へ赴任していますが、金沢は文化的にすごく豊かな街です。地元にはオーケストラ・アンサンブル金沢というプロオーケストラがあり、駅前の石川県立音楽堂を通りかかると、無料のロビーコンサートの生演奏が聞こえてきたりする。歌劇場も能楽堂もあるし、茶屋街には芸妓(げいこ)さんもいる。いろいろチケットを取っては出掛けているのですが、今は新型コロナウイルスの影響で行けないのが悲しいです。

 コンパクトな街の中でさまざまな芸術を楽しめるということでは、金沢は何となくニューヨークに似ているかもしれません。NTT時代に会社派遣で法律の勉強をするため米国のイリノイ州立大学に留学し、翌年ニューヨークの弁護士事務所に研修生として派遣されたときは、バレエやオペラ、ミュージカルをよく見ました。公演当日にチケットが買えて、しかも安い。オペラはちょうどワーグナーの大作「ニーベルングの指環」の公演があって、4部作をすべて見ました。立ち見でつらかったという記憶ばかりが残りましたが……。好きというよりは、せっかくだから見られるものは見ておきたい。貪欲なんです(笑)。

 家では毎朝起きるとバッハ全集を流しています。他の作曲家の曲も試したのですが、バッハが一番落ち着く。私の場合、「この曲を聴こう」ではなく、生活の中に音楽があるのを楽しむ感じです。朝は私にとって勉強の時間。30代は今後のキャリアのためにと経営学の勉強に取り組み、広報部長時代にグローバルの社員と仕事をすることになったのを機に始めた英会話のオンラインレッスンは、今も楽しく続けています。

 私はいろんなことにチャレンジするのが好きで、トラブルが起きると血が騒ぐタイプ。負けず嫌いなので、「管理職になりたくない」なんていう気持ちは一切なく、同じように働いて、同じ能力だったら女性も昇進しないのはおかしいと思っていました。

「朝はバッハ全集を流すと気分が落ち着きます。チェロの音が好きで、『無伴奏チェロ組曲第1番』は割とよく聴いています」
「朝はバッハ全集を流すと気分が落ち着きます。チェロの音が好きで、『無伴奏チェロ組曲第1番』は割とよく聴いています」