ビジネスの転機で背中を押してくれたシンフォニー、大切なライフイベントを彩ったアリア…クラシック音楽を愛する各界のリーダー層が、自身にとって忘れられない一曲と共に人生を語ります。今回登場するのは、2019年6月にNTTデータ北陸代表取締役社長に就任した池田佳子さん。NTTデータ信越の社長も兼任し、多忙な日々を送る池田さんが挙げてくれたのは、キャリアの転機になったというNTTデータの広報部長時代に出会った曲でした。

(上)法務一筋から一転 未知のコンサート事業で開けた新世界 ←今回はココ
(下)「やり過ぎると人はついてこない」苦い経験、今も胸に

 出身は東京の上野で、近くには東京文化会館や石橋メモリアルホールがあり、音楽的に恵まれた環境でした。でもその割にはコンサートに行ってなかったんですよね。ただ、家ではソニーミュージックのクラシック全集のレコードがあって、小学校高学年から中学生の頃は、学校から帰ってくるとずっと聴いていた記憶があります。特に大好きだったのが、ドボルザークの「新世界より」(交響曲第9番)やスメタナの「モルダウ」。聴いていると情景が浮かぶ、壮大なイメージの曲が好きなのかも。大人になってからチェコのプラハへ行ったときは、実際にモルダウ川を見られたことに感動しました。

 レスピーギの交響詩「ローマの松」は、2017年7月から2年間、NTTデータの広報部長を務めた時代に出会った思い出深い一曲です。

法務一筋から一転、広報のトップに「なぜ私が?」

 私は新卒でNTTに入社して途中でNTTデータに転籍したのですが、ほぼ一貫して法務畑を歩いてきました。法務といえば、専門性の高い、かたーい仕事。そこから一転、会社の顔となる広報への異動ということで、自分でも「なんで?」と思いました。

 広報部ではマスコミ対応をはじめ、さまざまなイベントを手掛けます。中でも恒例のイベントの一つが、「NTT DATA CONCERT OF CONCERTS」。一般公募したお客様をご招待して毎年開催しているクラシックコンサートで、作曲家の三枝成彰先生の監修のもと、第一線で活躍する国内外の音楽家による演奏をお届けしています。2018年は会社設立30周年に当たり、例年以上に豪華なプログラムで開催することになりました。

 私はクラシックを聴くのは好きなのですが、楽器の区別もつかないし、絶対音感もない。音楽についての知識がないことは自分としてはコンプレックスに近い感じなんです。そんな私がどうやってコンサートの企画を進めればいいのかと最初は戸惑いました。でも、部内には音楽に詳しくて、このコンサートに長年関わっている人がちゃんといるんですね。そういう人にいろいろ聞いたり、三枝先生にお任せしたりしながら進めていきました。