客席後方に金管奏者が出現 ホール全体を包む音楽に感激

 コンサートのパンフレットやチラシのデザインを選んだり、「世界が変わっても、変わらず愛されてきたもの。」というキャッチコピーを決めたりといった仕事も、すべてが初めての経験で、やってみると面白かった。それまでは自分の専門分野で仕事をしてきたわけですが、「知らない世界のことも、楽しくできるんだなあ」というのが思いがけない発見でした。

 コンサートにはソプラノ歌手の小林沙羅さん、テノール歌手のジョン・健・ヌッツォさんが出演して、プッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」や「トスカ」、「トゥーランドット」などから有名なアリアを披露。それもとても素晴らしかったのですが、私が一番印象に残ったのが、「ローマの松」でした。

 「ローマの松」は、ローマで古代から大切にされ、今も街のあちこちで見られる松のある風景を表現した作品。4曲で構成されていて、最終曲「アッピア街道の松」では、ステージ上のオーケストラに加え、バンダを入れました。バンダというのは、客席や舞台裏など、ステージ以外のところで演奏する「別動隊」のこと。曲の終盤にトランペットとトロンボーンがサントリーホールの2階席の出入り口付近に現れ、華やかに盛り上げてくれました。

 バンダを使う曲を聴いたのはそのときが初めて。前方のオーケストラと後方のバンダによって音に包まれる感覚を味わい、ホール全部を使い切る音楽の形は本当に素晴らしいなと感激したんです。

 コンサート全体もすごく盛り上がって、広報部長としてもやりきった! という充実感がありました。でも実は、後でほろ苦い出来事も経験することになります。

「ずっと法務一筋で来て、『知らない世界の仕事も楽しくできるんだ』というのは新たな発見でした」
「ずっと法務一筋で来て、『知らない世界の仕事も楽しくできるんだ』というのは新たな発見でした」