いきなり人気雑誌で仕事が決まるも、手応えのない日々
イラストレーターになるには出版社に持ち込みをすればいいと本で知って、そこには出版社の住所も書いてありました。ただ、直接持ち込むのは勇気がなくて無理だったので、「郵送OK」の印がついているところにだけ送ったんです。そうしたら初仕事が決まりました。マガジンハウスの雑誌『Hanako』、しかも連載のイラストです。
でもいざ仕事を始めてみたら、ちょっと思っていたのと違うかも、と感じ始めました。美容についての連載で、子宮とかレモンとか運動しているところといった説明的な挿絵をガーリーなタッチで描くというもの。毎回指示されたモチーフを絵にして、淡々とやり取りが進んでいきました。絵の存在意義もあまり感じられないし、毎回出版社までイラストを届けに行って編集者と話すのは緊張するし……なんだかつらいなあ、と。
他にも持ち込みをした出版社からいくつか仕事の依頼はありましたが、やっぱり手応えはつかめません。そもそも当時の私には、イラストレーターとしてどういう表現を目指そう、みたいな意識が全くありませんでした。得意な絵でバイト代くらいのお金をもらえてラッキー、みたいな感覚でした。
24歳で結婚していたので、「絵もあんまり楽しくないし、もう専業主婦をしつつレンタルビデオ屋でバイトをしていればいいかな」と思うこともありました。
そんな私が初めて描く楽しさに目覚めたのは、仕事以外の場所でした。
続きの記事はこちら
⇒五月女ケイ子 仕事の依頼を「ちょっと飛び出す」楽しさ
取材・文/谷口絵美(日経xwoman ARIA) 写真/鈴木愛子
イラストレーター、エッセイスト、漫画家