オケの経営問題に関心 会社を冷静に見る視点につながった

 経営を自分事として考えたことはそれまで全くありませんでしたが、オーケストラの経営問題には関心がありました。私が最も尊敬する朝比奈隆という人は単なる指揮者ではなく、大阪フィルの経営者でもありました。しかも大阪というオーケストラの土壌が何もないところに、戦後まもなくオーケストラを作った。

 僕は旅行を兼ねて日本中のオーケストラを聴きに行くのが趣味でもあるのですが、オーケストラという組織はもうからないし、ほとんどが経営面で課題を抱えています。でも、学生時代にオーケストラの事務所でアルバイトして以来、ずっとそういうものに興味を持っていたことが、結果的に会社に対して文句や意見を言ったりすることにつながっていたんだと、最近になって気付きました。

 うちの会社は今50人くらいですけれど、数十人の人を率いて一つのことをやるという経験もなく社長になって、一番参考にできるのってオーケストラなんです。

 先日、大学時代に指導を受けた指揮者の汐澤安彦さんがある地方のオーケストラを指揮するということで、リハーサルから見に行きました。汐澤さんは80歳で、現在まで50年以上もの間、上智オケの指揮者を務めてくれている方なのですが、彼のリハーサルは経営者としても本当に勉強になりました。

 アマチュアのオーケストラは演奏会でやる曲を半年くらいかけて練習しますが、プロは演奏会ごとにいろんな指揮者を外部から迎えます。よく知らない同士が顔を合わせてわずか2日間ほどリハーサルしただけで、本場に臨むんですね。

「初心者の人がクラシックを聴くなら、僕はオーケストラが一番いいと思います。100人のプロが懸命に何かを作り上げようとしている現場って、会社でだってなかなか見られないですよね。『あの人かっこいい』でもいいので、目の前で起きていることに何かしら興味を持ってくれたら、心をゆさぶる『奇跡』のような演奏に出合った時は理屈抜きで絶対に分かります」